「MIYASHITA PARK」全体を映像と音で包み込む、
圧倒的な没入型空間ジャックメディア。
東京・渋谷の「MIYASHITA PARK」〔事業主:三井不動産(株)〕に整備された58面のLEDサイネージネットワークは、施設全体を一体的な演出空間へと変える、新しい都市メディアとして注目を集めている。

「MIYASHITA PARK」は、1〜3階を商業施設、4階を公園とする全長約330mの低層複合施設で、北側には直結型のホテルも備える。遊歩道歩行者を含めた月間来場者数は約170万人。都心の公園と商業施設が一体となったこの空間は、現在58面のLEDビジョンが設置され、施設全域を映像と音で包み込むメディア空間として機能している。
これらのLEDビジョンはすべて(株)昭和ネオンの「SHOWA VISION」を採用。館内に設置された41面は音声出力にも対応しており、58面をシンクロさせた放映により、施設全体をひとつの演出空間として展開できるのが特徴だ。イベントやプロモーション時には、空間全体を同一テーマで“ジャック”するようなダイナミックな演出が可能となる。

不動産を“メディア化”する
三井不動産の新戦略
三井不動産がこの大規模なサイネージネットワークを整備した背景には、同社が掲げる「施設のメディア化」という戦略がある。三井不動産 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部の國嶋航太氏は次のように語る。
『都心では土地代や建築費の高騰もあり、新しい物件を建てて収益を得る従来型のビジネスが難しくなっています。その中で、既存の不動産をメディアとして活用し、広告やアートを通じて新たな価値と収益を生み出していくという発想が、施設のメディア化です』。
この構想の具体的なアウトプットとして整備されたのが、サイネージネットワークと「Park in Park」である。サイネージが情報発信の装置であるのに対し、「Park in Park」はイベントやフード、音楽、アートなど多様なカルチャーが交差するスペースとして設けられた。ギャラリー機能を核に、クリエイターやアーティストが集い、新たな出会いや発見を生み出す場となっている。情報発信と体験の場を組み合わせることで、施設全体を体験型メディアとして機能させる構想だ。

屋外施設で求められる
LEDビジョン選定のポイント
現在のようなサイネージ環境が整備されたのは開業後のことである。2020年の開業当初、館内のサイネージは吹き抜け空間の柱型ビジョンと数台の自立式ディスプレイに限られていた。その後、メディア化の構想が具体化する中で、情報発信と広告収益を両立する装置としてLEDビジョンの増設が進められた。
設置計画には、施設設計を手掛けた(株)日建設計も関わっている。建築設計の段階から“余白”を意識した空間づくりがなされていたこともあり、景観を損なわずにサイネージを配置できたという。
ビジョンの選定では、屋外空間に適した輝度性能と高精細な表示、さらに安全性が重視された。
「MIYASHITA PARK」は若年層の来場者が多く、アーティストのライブなどと連動したプロモーションも多い。写真や動画撮影が行われるシーンを想定し、映像が鮮明に写る輝度と細かなピッチが求められた。
加えて、公園空間であることから耐衝撃性も重要な条件となった。多くの人が至近距離を通行する環境において、安全性を確保する必要があるためだ。
遊歩道に設置された柱型ビジョンは、W1,250mm×H2,750mmのLEDビジョンを柱1本に2面ずつ配置した構成で、計8本の柱が連続して並ぶ。アーティストのプロモーションでは、例えば8人組のグループであれば柱ごとに違うメンバーのビジュアルを掲出するなど、連続配置を生かした演出が可能となっている。
さらに、その連続ビジョンの“受け”として南側エレベーター外壁にはW6,000mm×H7,000mmの大型LEDビジョンを設置。大画面と柱型ビジョンを組み合わせることで、空間全体に強いインパクトを与える構成となっている。ピッチはエレベーター外壁の大型LEDビジョンが4.8mm、その他のビジョンは2.6mmで、すべてSMDタイプのLEDを採用している。

施設全体を“ジャック”する
ネットワーク型サイネージ
こうしたネットワーク型のサイネージ環境は、イベント時の演出効果にも大きく寄与している。國嶋氏は『イベントを行う際、“施設全体をジャックしたい”という要望は非常に多い』と話す。従来であれば、施設内の複数の場所でイベントを展開し、それぞれに造作物を設置するなどして初めて“ジャック感”を演出できた。しかし現在は、サイネージに映像素材を流すだけで施設全域に統一された演出を展開できる。製作コストを抑えながら、空間全体に強い訴求力を持たせることが可能になった。
また、サイネージの存在は新たなコミュニティの形成にもつながっている。アーティストとの連携や行政との情報発信など、これまで接点の少なかった領域との関係が生まれた点も大きな変化だ。
アートと地域情報を発信する
都市メディアの可能性
今後は、連続配置されたビジョンを生かした新たなコンテンツ演出にも取り組んでいく。三井不動産 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部 主事の山本宏亮氏は次のように話す。
『地域情報や行政情報などもしっかりと発信することで、地域に還元するメディアでありたいと考えています。「MIYASHITA PARK」は公園でもあるので、サイネージによる収益は公園の維持・管理にも活用しています』。
さらに同本部の伊藤 茜氏は、コンテンツ面での可能性についてこう語る。
『「MIYASHITA PARK」のサイネージは、連続して並ぶ8本の柱ビジョンそれぞれに異なるコンテンツを表示できる点が特徴です。この配置を生かして、端から端まで映像が流れていくような演出など、新しい表現にも挑戦していきたいです』。
同社は、広告だけでなくアートなど多様なコンテンツも積極的に発信していく構えだ。アートコンテンツの放映枠を確保し、渋谷らしいアートを発信するなど、地域からも愛されるメディアを目指す。
三井不動産では現在、同社が関わる施設に多くのサイネージを設置しているが、その活用はまだ発展途上にある。しかし國嶋氏は『「MIYASHITA PARK」の事例をモデルとして、今後は他施設への展開も視野に入れています』と自信を示す。
商業施設、公園、都市の回遊動線が重なる「MIYASHITA PARK」。その空間に張り巡らされた58面のLEDビジョンは、広告媒体にとどまらず、都市空間そのものをメディアとして活用する試みの象徴と言える。映像と音によって空間全体を包み込む没入型の情報発信は、都市型商業施設の新たなメディアモデルとして注目されそうだ。
■ 施主
三井不動産(株)
■ 企画提案・デザイン監修
(株)日建設計
■ 施工
(株)竹中工務店、(株)昭和ネオン
【問い合わせ】
(株)昭和ネオン
東京都品川区南品川1-7-17
Tel.03-3471-4141
https://www.showaneon.co.jp








