インタビュー

〈2023.9.8〉f.ディライト専務取締役 伏木 栄二郎氏

プリンターの実力を最大限に活かし
人々に彩りと歓びを拡げる。

インクジェットプリントを使用した空間演出・装飾を得意とする(株)f.ディライト。同社の専務取締役である伏木 栄二郎氏は人々に“歓び(よろこび)”を拡げるため、空間の美しさはもちろん、空間を快適なスペースにすることを大切にしている。今回はf.ディライトのインクジェットプリンターの活用法と、伏木氏のサイン・ディスプレイ業界への想いを聞いた。

▲ グラフィックを施したメッシュタイプのメディアとポリカーボネートを組み合わせた「デザインポリカ」。

 

 

増える仕事量に合わせて
UVプリンター増設を検討

 

———はじめに、f.ディライトが所有するプリンターについて教えてください。

 現在は、「RICOH Pro L4160」と「HP Latex 570」のラテックスプリンターが一台ずつ、ミマキエンジニアリング社製のUVプリンター「UCJV160」が2台稼働しています。
 今年の秋ごろには、UVプリンターをもう1台増設、またRICOHのプリンターは新型に入れ替える予定です。
 ラテックスインクは無臭であることから、当社にとっては必須のプリンターですが、昨今、UVプリンターを使う仕事も増えているので、UVプリンターを増やすことにしたんです。ですので、今後は5台体制になります。
 ただ、今の作業場は場所が狭く、プリンターを置くスペースもなくなってきました。作業員も増やしたいですし、いよいよ引っ越しかな、なんて思っています。

▲ リコー社製「RICOH Pro L4160」(写真左)と、ミマキエンジニアリング社製「UCJV160」(写真中央・右)。

▲ HP社製「HP Latex 570」

 




———仕事が増えているのは良いですね。

 本当は仕事が減るだろうな、と思っていたのですが、ありがたいことに増えていますね。
 増えている仕事は、ずっと継続していただいている飲食店のお仕事がメインで、ファストフード店やフードコートの店舗のレジ上にメニューが表示されているのをご覧になられたことがあると思いますが、ああいったメニュー表の仕事が増えています。シーズンごとにも変わりますし、新商品が発売されるたびに変わりますから。最近は、テイクアウト専用のレジもあったりして、1店舗あたりのメニュー表の数が増えているんです。
 当社は、そのメニュー表を8年ぐらい前に吸着メディアで提案させていただきました。貼って剥がせて、また貼れるというのが特長で、店員さんでも施工できるメディアです。本当は、施工することが我々の仕事でもあったのですが、あえてそこを切り捨てて提案することで、某飲食店では全店舗に導入いただけました。
 こういった吸着メディアの活用は今後、どんどん増えていくんじゃないかなと思います。簡単に施工できますし、剥がしても跡が残らないので、ガラスに貼ることもできます。
 世の中、ガラス張りの建物が増えていると思います。屋外に掲示物を貼ると、雨風などで汚れたり、劣化してしまいますが、ガラスの内側から屋外に向けて表示物を掲示すれば、綺麗なままです。

 

———メニュー表として使用する場合、吸着メディアは何に貼っているのですか?

 下地はメラミン化粧板です。その上に商品アイテムを印刷した吸着メディアを貼ります。吸着メディアは貼るのが本当にラクで、気泡が勝手に抜けていくんです。スキージーで気泡を押し出す必要もありません。
 吸着メディアへの印刷には、UVとラテックスの両方のプリンターを使っています。ラテックスは無臭で良いのですが、やはり生産性を考えると、UVプリンターに頼ることになりますね。数が膨大ですから。

 

 

断熱性能に優れたオリジナル商材
「デザインポリカ」の活用

 

———f.ディライトで取り扱っている「デザインポリカ」について教えてください。

 「デザインポリカ」は、ポリカーボネート素材にデザイン性をもたせたパネルです。断熱性能と高い強度があり、防炎製品として認定されています。
 「デザインポリカ」を使った、さまざまな製品を製作していますが、今後は自動車のルーフ部分に取り付ける提案をしていきます。当社では「デザインポリカ」を活用した「デザインシールド」と呼んでいるのですが、「デザインポリカ」を車のルーフに取り付けることで、夏はヒートプロテクトとして活躍します。
 車を利用する方だったらわかると思うのですが、夏の車内はとても暑いですよね。走行中はエアコンをつけているので大丈夫ですが、エンジンを切ると、車内温度は一気に60度ぐらいまで上がることもあります。電動工具を積んでいると、バッテリーの充電不良が起きてしまう。使いたい時に使えなかったり、クールダウンの時間が必要だったりと厄介なんです。プロパンガスや塗料を積んだりする方、キッチンカーで作業する方などは、苦労されているのではないかなと思います。
 「デザインポリカ」を取り付ければ、太陽光はもちろん、冬場の積雪も「デザインポリカ」の上に雪が載るので、車体が直接冷えません。もちろん、デザインをつけることもできますので、屋根で自社の宣伝も可能です。
 また、引き出し式のひさしをセットしたり、ルーフのサインが起き上がるような仕様も検討しています。
 とは言え、今はまだ細かい検証をしている段階です。いくら、UVインクといっても、紫外線に当たり続ければ劣化するでしょうから、それがどのぐらい保つのかという検証はこれからになります。どのメーカーのインクと相性が良いのか、ということも見極めていく必要があります。
 現在は、印刷したメディアをポリカーボネートに合体させるというやり方をしています。紫外線をカットしてくれるポリカーボネートの下にメディアを入れれば、インクを綺麗な状態で維持できるのではないかなと思っています。
 それと、フラットベットプリンターを使って、ポリカーボネートにダイレクトプリントするのが良いのかな、とも考えています。時代はフラットベットプリンターになっていますからね。当社もそろそろ大きなプリンターが欲しいなと思っているところです。

 

▲ 「デザインポリカ」を車のルーフに設置(装飾例)。

▲ 「デザインポリカ」と印刷材を組み合わせながらトータルで店頭演出が可能。ひさしやルーフのサインが起き上がる仕様も実現できる。



———「デザインポリカ」の「デザインシールド」はどのようにして車に設置するのですか?

 ルーフキャリアを屋根に設置して、「デザインポリカ」を接合します。風圧などの問題もありますから、人間が乗れるぐらいの強度があるルーフキャリアが必要です。
 現状は、業務用の車両への設置を考えていますが、最近はキャンプが流行っていますよね。車で遊びに行く方たちが楽しそうにしているのを見ると、アウトドアを楽しむ人たちにも、「いいね」と言ってもらえるんじゃないかなという期待をしています。


▲ 業務用車両への「デザインポリカ」設置の様子。




仲間を増やして
望まれる仕事ができる業界に

 

———前回取材(「月刊サイン&ディスプレイ」2022年11月号掲載)させていただいた際、「デザインポリカ」を活用した製品の普及のために、ノウハウを広めたいとおっしゃっていましたが、今回の「デザインシールド」も同じ考えですか?

 もちろん同じです。真似されないように、というスタンスではなく、より一層、使い方が広がるように同業者の方の協力をいただきたいなと思っています。
 14年ほど前の話ですが、メッシュ素材に印刷した装飾を、抹茶カフェである「nana’s green tea」さんの店内に、採用いただいたんです。そのお店が2年前に改装することになって、普通だったらこのようなメッシュ素材の装飾は撤去して廃棄するんです。10年以上前に印刷したものですから。でもデザイナーさんがそれを見て、廃棄するのはもったいないと再利用してくださったんです。新しくなった店舗では、机を仕切るソフトパーテーションに生まれ変わりました。自分たちだけではこのようなアイデアは生まれませんでした。
 そういった経験があるので、仲間を作り、多くの意見を取り入れながら「デザインポリカ」の使い方を広げていきたいと考えているんです。
 例えば、インクジェット出力は苦手だけど施工は得意というように、各社得意分野があると思います。得意なことを持ち寄って、安く仕事を受けるのではなく、望まれることを一緒にやろう、というような業界になれば良いなと思います。


インクジェットプリンターで
没頭できる空間作り

 

———そのほかに「デザインポリカ」を活用した新しい提案はありますか?

 ガレージの外壁への応用を考えています。屋根の部分にポリカを使う、というのはすでにあるのですが、当社では外壁での使用を提案したいんです。鉄板のガレージは、夏は熱く、冬は寒い。あと室内が暗いですよね。
 「デザインポリカ」を使えば、雨や風、ほこりも防ぎ、断熱効果で快適に過ごすことができます。昼間であれば室内が暗くなることもありません。夜になれば、室内灯がきれいに輝いて、外から見ても楽しめるガレージになります。
 最近では、愛車を保管するスペース付きの住宅もよく売れているそうです。リビングや寝室などの室内だけではなく、ベランダや庭、ガレージなどのスペースでも快適に過ごすことが広まっていけば良いなと思うんです。
 これも、過去の経験から思いついたアイデアなのですが、実は私の自宅では、メッシュ素材を「デザインシールド」としてベランダの天井と側面に設置しています。家の裏が山になっていて、暮らし始めた当初、虫が非常に多く、夕方になると藪蚊に襲われるし、時期によってはスズメバチがベランダに巣を作るんです。それだけでなく、カラスも多い。妻はベランダで家庭菜園をやっていたのですが、さくらんぼが食べごろになったよ、という話をした次の日にカラスについばまれてしまったんです。
 そこで、メッシュでベランダを囲んでみたところ、ベランダがまるでリビングのように快適な空間になったんです。妻は、晩ごはんの片付けが終わると、ベランダへ出て、夢中になって家庭菜園を楽しんでいます。自分の好きなことに没頭できるって素晴らしいなと思いました。
 ガレージも同じで、寒さや暑さを耐え忍ぶのではなくて、快適な空間で、心ゆくまで好きなことに没頭できたら良いなと思うんです。

▲ 「nana’s green tea 神戸ハーバーランド店」、改装前の様子。メッシュ素材に新緑が印刷されており、涼しげ。

▲ 「nana’s green tea 神戸ハーバーランド店」、改装後の様子。メッシュ素材の装飾がカットされ、ソフトパーテーションに生まれ変わった。表と裏で異なるデザインが印刷されている。

 

価値あるものづくりを続け、
多くの人々に“歓び”を拡げたい

 

———伏木氏はよく自身を“インクジェッター”だと言っていますが、“インクジェッター”としての想いを聞かせてください。

 価格勝負をするのではなくて、高くても買っていただけるものを提案していきたい。そういったことをしていくのが、“インクジェッター”の役目だと思っています。
 実は「デザインポリカ」やメッシュ素材を使った「デザインシールド」を商品化したいと、声をかけてくださった会社もあるんです。しかし、ロケーションはそれぞれ違いますから、なかなか商品に落とし込むのは難しい。だったら、やっぱり業界のプロが手がけるしかないですよね。安い人件費で安いものを生むのがインクジェットプリンターだなんて言われないように、頑張っていきたいなと思ています。
 昨今、デジタルサイネージやLEDなどを使った光る技術が広く普及してきています。でもインクジェットだって負けていない。私はこれからも“インクジェッター”として価値のあるものを作り、多くの人に歓びを拡げていきたいと思っています。


【問い合わせ】
(株)f.ディライト
神奈川県横浜市青葉区鉄町1209
Tel.045-500-9037
E-mail:e.fushiki@fdelight.co.jp
https://fdelight.co.jp

 

 

 

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