インタビュー

〈2022.10.11〉特別対談 乃村工藝社×アンドパッド

空間創造におけるDXの真意
—科学と感性で引き寄せる空間創りの未来とは—

空間プロデュースをオールラウンドで手掛ける乃村工藝社と、シェアNo1の施工管理アプリを提供するアンドパッド。その一角で指揮を執る両社のリーダーが「空間創造におけるDXの真意」をテーマに対談。科学的なアプローチの先に、両者が見据える未来を問うた。

 

▲ (株)アンドパッド 第一事業本部 第三部 部長の三井賢太氏(左)と(株)乃村工藝社 未来創造研究所 所長の津嶋正明氏。

 


空間創造を取り巻く
“歓びと感動”の再定義を

 

———最初に両社の事業とお二人の担当領域について教えていただけますか?

津嶋 当社は歴史にして今年で130周年を数える企業になりますが、古くは明治時代の芝居小屋の大道具を手掛けていたとされています。そんなエンターテインメント領域を起源としながら、「ディスプレイ業」と呼ばれる装飾・展示領域に広がり、1970年の大阪万博を前後に内装分野にもその裾野を広げながら現在に至っております。私のいる未来創造研究所は、「空間の感性と科学」を追究するポジショニングです。これまでは個々の「感性」と「実績」で推し進めてきたのですが、そこにファクトや客観的指標も取り入れ、根拠を伴った提案もできるようにしていこう、ということを目的に、今期から設立された部署になります。

三井 私たちアンドパッドはまだ歴史が浅く2014年に事業を開始し、施工管理アプリの提供を始めたのは2016年です。当初は工務店様向けのサービスとしてユーザーを広げましたが、2020年頃から非住宅領域のクライアント様が増え、それを契機に私が所属する専門部署も立ち上がりました。乃村工藝社様も一ユーザー様としてご活用いただいており、今後使い続けていただくことでどんな価値が生まれるか、私も楽しみにしているところです。


———お二人は昨今のディスプレイ業界あるいは社会に対して、どのような課題認識をお持ちでしょうか?

津嶋 私たちの起源が芝居小屋にあるように、その“歓びと感動”はぶれることなく追求し続けるべきと考えますが、一方で時代の変遷、殊にデジタル化の波やコロナ禍による影響は不可避です。中でも「顧客接点」「集客の概念」「空間の価値」は大きく様変わりしたことを実感しています。これには技術とユーザーの両側面での変化があると感じていて、技術については驚くほどのスピードでデジタルサービスのコモディティ化が進んでいる。そしてユーザーも、それに応じて期待するものの基準が変わり、リアルな空間でなくてもネットの方が臨場感を感じるユーザーが現れたり、我々が提案するものに対してお客様側から裏付けとなるデータを求めてきたりと変化しています。すなわち、“歓びと感動”も時代に応じたチューニングが必要だと感じているのです。

三井 私も「空間」へ求める価値については、機能的なものから情緒的なものへシフトしつつあると捉えています。その中で、今後はオンライン/オフラインという二元論にとらわれない、「ニューノーマル」に対してどうアジャストしていくか…これが業界としても一企業としても問われていると感じています。こうした変化の中にありながら、生産性向上やデジタル化をどう推進していくかが、今後取り組むべき課題として大きな割合を占めるのではと認識しているところです。

 

 

 

 

“ツール”は未来を考える時間をつくるためにある

 

———お二人はまさしくデジタル領域をリードしていく立場かと思うのですが、デジタル化あるいはDXという動きについてはどう捉えていますか?

三井 
私たちはANDPADという、言わば“ツール”を提供している立場になるのですが、デジタル化はあくまでも手段であって、お客様の願いを叶える立場でありたいと考えています。現場の方が抱える課題、例えば「生産性を上げたい」という思いには「ANDPADをこう使うことでうまくいっている会社さんがいますよ」とお声がけをする。そうしたソリューション提案を始め、お客様が実際に活用するなかでも継続的にサポートし、最終的に課題を解決するのが私たちの仕事です。

 津嶋 おっしゃるように、私たちもツールを入れることが目的ではないということを肝に銘じています。特に施工現場においては、顧客満足度を5点満点としたときに「満点を狙ったけれども、結果0点でした」というのが許されません。最低限はクリアしなければならない、言わば“3点死守”の世界ですから、些細なミスや連絡漏れがやがて致命傷になるわけです。そこへ施工ツールを導入することで、現場の滞りを未然に防ぐことができれば、高い体験価値を提供したり、未来を考える時間、感性を育んだりする余裕も生まれると思います。


———乃村工藝社様がANDPADを導入したのにもそのような背景があるのですね。

津嶋 私たちがANDPADのようなツールにトライするのは、それ自体が目的ではなく、ツールを入れる前に「これからの自分たちにとって何が必要なのか」「どこがどのように仕組み化されるべきなのか」といったことの検討に時間をかけ、徹底的に使い込みたいという思いがあります。当社は件数にして年間で1万ほどの案件を受注していますが、だからと言ってやり方が1万通りあるわけではない。では落としどころはどこなのか?「2-8の法則」で言えば、20パターンくらいあれば8割はカバーできるかもしれません。この辺りをまさに検討している最中で、ANDPADを含め、色々試しているところです。いずれにしても丁寧に取り組むことで、施工に関わる人たちの“腹落ち感”が得られれば、生産性も飛躍的に向上すると考えています。

 

 

 

 

今こそ情緒的な幸せを育める企業であるために

 

———デジタル領域でご活躍されるお二人の対談とあって、テクニカルな話題に終始するかと思えば、思いは「お客様の願いを叶える」などソフトなところにあることが印象的です。

三井 当社のミッションにも「幸せを築く人を、幸せに。」とあり、最終的にたどり着きたいところは私自身もここから揺らいでいません。働く一人ひとりの幸せ、例えば業務上の負担が減るとか、より価値の高い仕事ができるとか、そういったところへコミットすることができれば、個々が集まり成り立つ企業あるいは社会という集団もまた、幸せになれる。その過程でANDPADがお役に立てればと考えています。

津嶋 来日観光客の方々が「日本のサービスは素晴らしい」と称賛されるという話をよく耳にします。私は建設・ディスプレイ業界のサービスも、きっと世界に誇れるものだと思っています。大きいスケールにはなりますが、そのジャパンクオリティをさらに上げることで、グローバルに“歓びと感動”をお届けし、日本を元気にしていきたい。そのためには時に会社間のラインを越えた共益の姿勢、シームレスな基盤というものが必要になってくるでしょうし、デジタルデータや科学的な根拠などがその時の支えになれていたらと願っています。


【ANDPADアプリに関する問い合わせ】
(株)アンドパッド
Tel.03-6831-4551
E-mail:info@andpad.jp
https://andpad.jp

 

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