インタビュー

〈2021.11.19〉ワイドフォーマットプロダクションプリンター「RICOH Pro L5160e/L5130e」「RICOH Pro TF6251」

培った技術を惜しみなく活用し、
日本のサイン市場に本格参入。

 

プリンターヘッドをつくり続けてきたリコーが2021年3月、ついにプリンターの国内販売を開始。満を持して投入した「RICOH Pro L5160e/L5130e」と「RICOH Pro TF6251」の詳細を中心に、リコーの今後の展開などについて、リコージャパンPP事業部の山下 浩氏と國分 直氏に訊いた。


▲ 
「RICOH Pro L5160e」



▲ 「RICOH Pro TF6251」




時間をかけて改良、
プロ仕様の仕上がりに

 

−ヘッド供給を中心に行っていたリコーが、なぜプリンターを製造・販売することになったのでしょうか。

山下氏:当社では、20年ほど前からプリンターヘッドを製造しており、様々なプリンターに供給してきました。また、ラテックスやUVインクもつくっていまして、その経験を活かし、今回、製品化に至りました。
 プリンター事業に限った話ではありませんが、社内で環境問題やSDGsなども考慮していきたい、という話がありまして、それなら今あるパーツを自分たちで組み込むべきではないか、ということで筐体をつくることになりました。

コロナ禍で市場規模は小さくなっていますが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。

國分氏:コロナウイルスの流行は予想外の出来事でした。ただ、一過性の事態であると考えておりましたので、コロナ禍が明けて市場が回復してくる際に、スムーズにプリンターの導入検討を進めて頂けるようにしていくためには、当初どおりのタイミングでの投入が必要と考え、進めました。

かなり前から発売を考えていたんですね。

山下氏:実は、2018年の「IGAS(国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展)」に参考出品していました。そして、その流れで海外で先行販売を開始したんです。日本国内では、お客様の求められる品質が高く、もう少し性能を磨く必要があると感じ、改良を重ねていた次第です。

國分氏:海外で先行販売していた製品を日本のお客様に見ていただいたとき、全然スペックが足りない、と厳しくご指摘をいただきまして、お客様の意見を参考に改良しました。メインターゲットはサイングラフィックスのお客様としており、ようやくそこに辿り着けたという感じです。「RICOH Pro L5160e/L5130e」は、サイングラフィックスのプロの方にも使っていただけるまでに改良できたと自負しております。


▲ 「RICOH Pro TF6251」の出力サンプル。アクリルやレンガブロックなど、様々な素材に印刷可能だ。



発売と同じタイミングで出展したJAPAN SHOPでの反響はどうでしたか。

山下氏:『リコーにも、インクジェットプリンターがあったんだ』という声が一番多かったですね(笑)。発売と同じタイミングだったということもあり、やはり展示会の後からお問い合わせをいただくようになりました。
 現在、ラテックスの市場は拡大していますので、「RICOH Pro L5160e/L5130e」は、ある程度の反響を想定していました。しかし、フラットベッドは競合も多く、正直あまり反響はないのでは、と思っていたのですが、我々が想定していたよりも、多くのお問い合わせがあり、とても驚いています。まずは皆様に認知していただけるようにがんばりたいです。


高い技術で低温ヒーターを実現、多様なメディアに対応

 

−「RICOH Pro L5160e/L5130e」の特長を教えてください。

山下氏:1,600(mm)幅と1,300(mm)幅のラテックスのインクジェットプリンターです。プロの方に使っていただけるよう、生産性と色の発色にこだわりました。
 スピードは標準モードで、RICOH Pro L5160eが25.0m²/h、RICOH Pro L5130eは22.3m²/hです。サイングラフィックスの印刷も標準モードで十分きれいに印刷できます。
 インクは、白、オレンジ、グリーンを搭載し、高い色の再現性を可能としました。CMYKデータだと、オレンジとグリーンインクはあまり生かせないかもしれませんが、今後、RGB入稿が増えてくると思っておりまして、そうなるととても鮮やかな表現ができます。

國分氏:ラテックスインクにしたのは、環境問題を意識してのことです。圧倒的に溶剤市場の方が大きいですが、海外ではラテックスも広がりを見せており、未来のことを考え、ラテックスにしました。

山下氏:オレンジ・グリーンインクにしても、ラテックスインクにしても、今はまだ少し早いかもしれませんが、もう一歩二歩先のことを考え、いずれこういう時代が来るよね、というところに賭けている部分があります。


▲ 「RICOH Pro L5160e/L5130e」で出力したタペストリー。




−他社との差別化を図った部分はありますか。

山下氏:対応メディアが多いことです。当社プリンターの内蔵ヒーターの温度は約60度です。メディアメーカー様に伺ったところ、ヒーターの温度が80度以下だと、使えるメディアがグッと増えるそうで、余裕をもって60度にしました。これにより、薄い紙や凹凸のある紙など、様々なメディアに対応することが可能となっております。

どのようにして60度を実現したのでしょうか。

山下氏:ヘッド技術の高さが理由の1つです。インクはプロセスカラーインクの中にマイクロカプセル樹脂をすでに練り込んでいる状態になっています。これにより他社様と比べるとやや粘度があるインクになるのですが、粘度があっても飛ばせるピエゾヘッドを使うことで、温度が低くてもしっかりと定着するようになっています。


厚み11センチ対応で作業効率アップ

 

−「RICOH Pro TF6251」はいつから販売を考えていたのでしょうか。

國分氏:「RICOH Pro L5160e/L5130e」と同様、2018年の「IGAS」で、海外で先行発売していた「RICOH Pro T7210」をお披露目し発売を検討しておりましたが、『国内ではそこまでのサイズは必要ない』というお声を多くいただきまして、発売は見送りました。その後、サイズを変更し改良を重ね、「RICOH Pro TF6251」から発売を開始するに至りました。

「RICOH Pro TF6251」の特長を教えてください。

國分氏:こちらもプロの方に使っていただきたいので、やはり生産性にこだわり、ヘッドを12個搭載しました。この価格帯(標準価格15,950,000円)で、この生産性を実現するのはなかなか難しいと思います。
 また、11cm厚まで対応できるのも特長です。通常は厚み5cmほどのメディアに印刷することが多いと思うのですが、少し凹凸があったり、治具を使うとさらに厚みが出ますので、余裕を持って11cmまで対応できるようにしました。さらに、ロールのオプションもあるので、メディアへの対応力が高いです。
 インクは、それぞれの用途に合わせて使えるように2タイプ用意しました。ひとつは、CMYKにホワイトとクリアからなる6色と、プライマーで構成されたスタンダードタイプ。もう1つは、CMYKとホワイト・ホワイトで構成されたダブルホワイトタイプです。鉄板やガラスなどつるつるした物に印刷する場合には、密着力が必要になってきますので、プライマーが入っている密着性の高いスタンダードタイプがおすすめです。ホワイトを頻繁にお使いになる方は、ホワイトの生産性を高めたダブルホワイトがおすすめです。

RIPについて教えてください。

國分氏:どちらのプリンターもドイツのカラーゲート社のRIPを採用しています。

山下氏:カラーゲート社のRIPは1つの操作画面の中で完結するので、非常にわかりやすいです。手順もビジュアルで直感的にわかるようになっています。


▲ リコーのショールームには、「RICOH Pro L5160e/L5130e」と各種サンプルが展示されている。



今後の展開を教えてください。

山下氏:マシンスペックだけでは特性が弱いので、新しい事業の提案と併せておすすめしています。例えば壁紙事業はもちろん、当社ならではのプロジェクターやデジタルサイネージなどを組み合わせることで、空間のトータルコーディネートもできると思います。少しでもサイン業界の方のお力になれれば幸いです。


【問い合わせ】
リコージャパン(株)
東京都港区芝浦4-2-8 三田ツインビル東館9F
E-mail:pp_event@jp.ricoh.com Fax.03-6867-1048
https://www.ricoh.co.jp/

 

▲ 國分 直氏(左)と山下 浩氏。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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