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〈2026.4.2〉“創造”“発信”“集積”で街を動かす、循環型タウンマネジメント

コンテンツ事業の先に国際競争力を見据えて
東急不動産が進める「広域渋谷圏戦略」。

東急不動産(株)では昨今、「広域渋谷圏戦略」に取り組んでいる。施設の開発に限らず、街の魅力となる未来価値を創出し、国際競争力の強化に寄与する狙いだ。この戦略や具体的な事例について、東急不動産 渋谷運営事業部 コンテンツ営業企画グループ グループリーダーの伴 将晃氏、係長の東日康浩氏、五十幡 隆亮氏の三名に訊いた。




国際競争力の強化を見据えた
「広域渋谷圏戦略」

 

 東急不動産が広域渋谷圏戦略の推進を掲げたのは、2023年。東急グループでは渋谷駅から半径約2.5キロメートル圏内を「広域渋谷圏」と定めており、伴氏は『「フォレストゲート代官山」や東急プラザ原宿「ハラカド」など、圏内でのアセットが竣工するタイミングだった』と振り返る。その上で『物件すなわちハードに限らず、街での過ごし方、働く・遊ぶ・暮らすといった切り口それぞれにおいて、どう価値を上げていくか。タウンマネジメントのような働きを当社としてもっと高めていこうと考えた』と、戦略立案に至った経緯を語った。

 その上で広域渋谷圏である渋谷や原宿、表参道などのエリア特性に頭を巡らせて、伴氏らは『発信力、多様性に富み、かつ物事がスピーディに流れている』と分析。この強みを維持し、伸ばすために打ち出したのが、“創造”“発信”“集積”のサイクルだ。

 『まずはそれぞれの物件や立地の特徴を生かすコンテンツを創造する。次にそれを発信することで、話題性を高め、にぎわいに繋げる。こうした積み重ねをもってタウンブランディングを進め、既存物件も含めた価値向上を図る。何よりこのサイクルをどれだけ強く大きく回せられるかに重きを置いている』。

 同氏はそう説明すると、『このサイクルを回した先にあるのが、世界からの注目であり、国際競争力の強化。先般東急プラザ渋谷で開催した「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」も、有難いことに海外から「是非うちでもやりたい」との相談をいただく。こうして広域渋谷圏で生まれ、育ったコンテンツを海外に輸出できることこそ、理想とする形』と補足した。

▲ MAZEオープンに合わせた、東急プラザ表参道「オモカド」のエントランスジャック展開。



1,000㎡級の展示スペース
「MAZE」開設の狙い

 

 次なるムーブメントに期待を寄せ、同社が着手したのが東急プラザ原宿「ハラカド」に新イベントスペース「MAZE(メイズ)」を開設することだ。伴氏は最初に『MAZEという名称にも象徴されるように、ここには少し尖ったもの、「自分らしさ」みたいなものを集めたい。訪れた人が、感情や思考の迷路に入り込み、自分自身の好きを見つけ、自由な感性と多様性を体現する場を思い描いている』と明かすと、『ガールズグループ「HANA」の人気が目覚ましいことはもちろん、自分らしさを大切にしながら夢に向かって努力を重ねる姿が、「MAZE」のコンセプトにもぴったりだった』と、コラボレーションの経緯にも触れた。

 「MAZE」のこけらおとしイベントにも該当する「HANA EXHIBITION」では、初公開の衣装やMVの小物などを通して、HANAが大切にしてきた“自分らしさ”の世界観を表現。会場内には約160インチ(CHANGE ViSiON社製、3,600mm×2,025mm、1.875mmピッチ)にもなるLEDビジョンを設置し、情報発信に一役買った。事前予約制で来場を受け付けたところ、16日間19,040名分のチケットは即日上限に達した。東日氏は『今回の「HANA EXHIBITION」のキービジュアルは、MAZEのコンセプトが表現されている。そうした点でも、理想の共創が実現できた』と振り返る。伴氏も『1,000㎡級の規模となる展示スペースを原宿エリアの中心地に開設できたことは、当社にとっても大きい。今後もコンセプトにマッチしたクリエイターやアーティスト、コンテンツと積極的にコラボレーションを重ねながら、MAZEのみならず「ハラカド」、ひいてはエリア全体の価値も高めていきたい』と意欲を覗かせた。

▲ 「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」のBANK ROOM。「イカゲーム」シリーズの寮を完全再現した威圧的な空間は、積み重ねられた2段ベッドで埋め尽くされており、プレイヤーを圧倒する。

▲ 第1のゲーム「TUG OF WAR(綱引き)」ゾーン

▲ 第2のゲーム「MARBLES(ビー玉遊び)」ゾーン

▲ 第3のゲーム「MEMORY STEPS(ガラスの橋)」ゾーン

▲ 第4のゲーム「RED LIGHT, GREEN LIGHT(だるまさんがころんだ)」ゾーン

▲ 第5のゲーム「ROUND & ROUND(椅子取りゲーム)」ゾーン



「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」
こだわったのは“いかに没入感を高めるか”

 

 東急不動産の「創造」の取り組みは、広域渋谷圏の他の施設においても積極的に進められている。この代表的な事例として、同社は東急プラザ渋谷で開催中の「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」を挙げた。

 2026年1月16日から7月20日までの約半年に渡る同イベントでは、Netflix「イカゲーム」シリーズの独特な世界観とスリルをリアルに体感することができる。これまでにもアメリカ・ニューヨークを皮切りに、スペインや韓国、イギリスなどで開催され、日本にとっては今回が初上陸となった。五十幡氏はここに至る経緯について『以前からNetflix社との接点はあったが、今回のような体験型イベントを開催するにあたり、不動産会社である当社の新しい挑戦として、数年かけて企画検討を重ねた。結果として渋谷という場所の特性を生かしながら、国内外の多くの方に楽しんでいただける「イカゲーム」シリーズを題材として実施するに至った』と説明すると、『幅広い世代の方に楽しんでいただけるような体験型コンテンツに仕立てている』と付け加えた。

 実際の会場では、作品同様に自身の顔をスキャンしてプレーヤーとして登録する。6つに分かれたゾーンでは、「RED LIGHT,GREEN LIGHT(だるまさんがころんだ)」や「TUG OF WAR(綱引き)」などが待ち構え、優勝者にはVIP ROOMへ招待する特典も用意した。五十幡氏は、これらの具現化にあたって、専用の建物を設えるわけではなく既存の商業施設にあるスペースを活用した点にも言及する。

 『「東急プラザ渋谷」に限らず既存施設でイベントを開催する際には、“IPの世界観への没入をどう作り上げるか”という課題が大きい。一瞬でもそれらしいものが目に入れば、体験価値や感動が薄まってしまう。いかに没入感を高めるかは、オペレーションの面でも、空間の作り方の部分でも、最後までこだわった』。

 こうして実現した「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」の開催にあたっては、周辺施設や同じく東急不動産が展開する渋谷サクラステージ間が繋がるペディストリアンデッキにも広告を施し、さらには作品に登場する「ピンクガード」も街を練り歩くなど、同社が推進するエリアマネジメントも活かして告知にも工夫を重ねている。

 東急プラザ渋谷や渋谷サクラステージの飲食店では、同イベントと連動した「至高の晩餐メニューフェア」も実施しており(3月31日まで)、今後も会期終了まで様々な形で盛り上げていく構えだ。

▲ 「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」の会場である東急プラザ渋谷の周辺では、OOHによる告知も実施。



地域社会への貢献を見据えた、
ハードとコンテンツの両輪

 

 五十幡氏は今後の展望について、『商業施設にコンテンツを持ち込むというのは、当社にとっても「Netflix 渋谷リアル・イカゲーム」が新しい試みになる。今後も様々な企画を練っていきたい』と話し、『場をうまく活用することでコンテンツ事業のみならず、「至高の晩餐メニューフェア」など、テナントとのコラボで施設にも波及効果をもたらす。これらを積み重ねることで、物件の価値そのものの向上や、当社の新しいビジネスチャンスに繋がる。何より価値あるコンテンツを広域渋谷圏で実施・発信することで、国内外から「渋谷って面白いことをやっているよね」との注目が集まれば、街自体の魅力も高めていける』と期待した。

 また伴氏は、『国内外の集客を考えたときに、ハード面とソフト面で“人が集まる仕掛け”を両輪で回していく必要性を改めて感じている』と示唆する。そして『今後も当社では不動産アセットへの投資を行いながら、コンテンツ事業にも注力することで、広域渋谷圏戦略を通した地域社会への貢献を進めていきたい』との方向性を示し、より力強い“創造”“発信”“集積”のサイクルに向け前進を誓った。 



【問い合わせ】
東急不動産(株)
東京都渋谷区道玄坂1-21-1 渋谷ソラスタ
https://www.tokyu-land.co.jp/

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