S&Dセレクション

〈2026.4.1〉工事現場に彩りを与えるデザインフェンスシート「Fenceeee!」

工事現場を、避難所を変える。
デザインフェンスシートが秘めた可能性

日本保安工業(株)では2025年に、工事現場に彩りを与えるデザインフェンスシート「Fenceeee!」を発売。防災現場にも用途を広げることで、注目を集めている。製品の特徴から今後の展開まで、同社代表取締役の小山大輔氏、ディレクターの鈴木千佳氏、プロジェクトマネージャーの里田実彦氏、デザイナー/アートディレクターの岡﨑菜央氏に話を聞いた。



デザインと安全にこだわった
自社オリジナル製品を模索

 

 1970年に創業した日本保安工業は、建設工事用材料及び保安器材の企画、製作、販売、レンタル、リースを主とし、ほかに道路標識その他各種標識類の企画・製作などにも尽力してきた。そのなかで小山氏は『交通と安全に長らく関わってきたバックグラウンドを生かしながら、自社にしかできない製品をつくっていきたいと考えた』と振り返り、フェンスシートに着眼した。

 『工事現場では、ガードフェンスと併せて、目隠しや粉塵飛散防止の観点からフェンスシートが用いられる。従来のシートの多くは無地で、その状況が数十年前から変わっていなかった。しかし、そのあり方自体に目を向ける動きはほとんどなかった。そこで当社は、工事現場を囲うフェンスシートを明るく、親しみやすいものへと転換した。そうすることで、地域の方々をはじめとするステークホルダーにも笑顔になってもらえるのではないかと考えた』。

 同氏は開発の経緯についてそう振り返る。ゼネコンなどでも工事現場の環境改善、イメージアップは課題として認識され始めていたが、それを実現視する手段が限られている現実もあった。そういった状況で小山氏は、社外からスタッフを招致したプロジェクトに踏み切った。

 実際に招かれたデザイナーの岡﨑氏は、そもそもの工事現場について『一般的に“怖い”“あまり近づきたくない”というイメージを持たれやすい』としたうえで、『実際には新しい住まいや人々の生活をより良くする施設を建設しているからこそ、明るい気持ちになる、老若男女にとって親しみのあるデザインを施したかった』と説明。『ビジュアルで人を元気にさせたり、優しさを与えたりできるのがデザインの醍醐味。その力が工事現場に加わることで、もちろん安全は第一にしながらも、新しい化学反応が期待できるのではないか』と胸を躍らせながら、「Fenceeee!」にいくつものデザインパターンを用意した。



 

100を超えるデザインパターンと
環境に配慮した素材を強みに

 

 2025年2月のリリース段階で100を上回ったデザインパターンは、現在も少しずつバリエーションを増やしている。また依頼を受けてオリジナルデザインの製作にも取り組んでおり、納期もデザイン決定から5営業日以内と、円滑に進める。

 日本保安工業は、シートの素材にもこだわりを持っている。小山氏は『当社では、自社商品の多くにバイオマス素材を用いてきた。「Fenceeee!」でも、現場で必要とされる強度のバイオマスターポリン素材を採用した』と説明。さらに『今後はメッシュタイプのシートも、バイオマス素材で生み出せないかを模索中』だと明かした。これが実現すれば、世界でも例を見ないバイオマス素材のメッシュターポリンが現場に並ぶこととなる。

 こうした取り組みと並行して、業界的にはデジタルサイネージを始めとする電子機器類が頭角を示していることにも触れざるを得ない。これについて小山氏は『デジタルサイネージにはデジタルサイネージなりの良さがある一方で、どうしても短いスパンで情報が移り変わることから、心には残りにくい。それに対して、アナログのサインは同じものを何度も目にすることになる。それによってしっかりと心に刻まれるし、そうだからこそ、心を豊かにできるのではないかと考えている』との見地を示す。

 また里田氏は『デジタルサイネージは注目されているし、とてもすぐれたサインであることは事実。しかし、一言で言えば「場所を選ぶ」。給電経路を持つ必要があるし、どうしても雨風には弱い。どちらかだけが残るというよりも、両方がそれぞれの強みを発揮するべきではないか』と補足した。


災害発生時のコミュニケーションを
円滑にする「防災Fenceeee!」

 

 こうして新たな可能性を切り拓きつつある「Fenceeee!」は、「防災Fenceeee!」の名で防災現場での普及にも乗り出している。これは過去に小山氏が、災害避難所の様子をメディアで目にしたことから着想した。その映像では「受付」という案内表示を段ボール紙にマジックで書いていたという。『「防災Fenceeee!」を備蓄倉庫などに備えていただくことができれば、誰もが必要な時に必要なサインを容易に掲出することができるのでは』と期待を寄せる。具体的には「避難所本部」「受付」「給水所」など、一般的な避難所で必要とされるサインを一式用意。立て看板や手持ち看板などに比べて人手が必要なく、収納時にも場所を取らないメリットも強調した。

 同社では既にオフィスを構える横浜市神奈川区での官民連携に乗り出し、防災訓練時の掲出とアンケートを繰り返しながら、改善を進め、多くの自治会などへの導入を目指している。また、同社のオンラインサイト「DanZeeeeN FACTORY!」では1枚単位での購入を可能とし、大小さまざまな拠点での導入を見込む。


 


既存の考えに凝り固まらず、
社会を変えるプロジェクトに

 

 今後に向けて小山氏は『まずは「Fenceeee!」のデザインバリエーションを増やしていきたい。その過程で他の企業や自治体とのコラボレーションもできたら、活用の幅も広がるに違いない』と期待する。また『「防災Fenceeee!」を代表例に、工事現場という当初のフィールドを越えた発展にも期待している』と話し、里田氏も『例えば誕生日や結婚式に向けたものなら「アニバーサリーFenceeee!」といったように、様々な業界向けに、あるいはtoCの市場でも「Fenceeee!」をシリーズ化できるのではないか。実際に建設業界以外でも、流通企業などからも関心を寄せていただいている』との意気込みを見せた。さらに『弱点と言える暗所での使用についても、何らかの形で光らせることができれば、より可能性が広がるはず』と話し、目下開発段階にあることを明かした。

 前段で触れたように、一連のプロジェクトは日本保安工業の社内リソースに限らず、社外からプロジェクトマネジメントとデザインの専門家を招致することで実現している。結びに小山氏は『近年は副業や兼業を選択する人が増えるなど、働き方そのものが変化している。経営者としても、今までと同じやり方をしていたら会社が伸びていかないという危機感がある。それこそが、今回のプロジェクト誕生の動機付けにもなった』と前置きし、『建設業界にいて凝り固まってしまった考え方に、一石を投じるようなモノの見方、考え方を取り入れて、会社としても業界としても、社会を変えていけるような、可能性を高めていけるような働きかけができれば嬉しい』と、新たな価値創造に向けたプロジェクトの展開についても展望を語った。


【問い合わせ】
日本保安工業(株)
神奈川県横浜市神奈川区新子安2-4-8
Tel.045-432-1390
https://nhk8109.com

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