街に増えゆくサイネージに新たな認知を
アーティストとともに描く未来の形。
アートとテクノロジーの領域での新しい価値の創造に挑むNEORT(株)では、自社のアートギャラリーNEORT++のみならず、街なかにもその活動範囲を広げ、「サイネージの文脈化」に挑んでいる。その意図や今後の展望について、同社代表取締役の高瀬俊明氏、取締役の中田宜明氏、竹元亮太氏に訊いた。
▲ NEORT++で開催された展示「計算する詩」。
アーティストと社会を繋ぎ、「新たな認知」を創造
NEORTは、デジタルテクノロジーを駆使した新しいアートのためのオンラインプラットフォーム「neort.io」の開発・運営を行うスタートアップ。創業当時はTARTとNEORTという二社が別々に歩んでいたが、より一体となった事業推進を目指して2024年6月に合併した。
高瀬氏は同社が展開する事業について『私たちは「新たな認知をつくる」というのをテーマに掲げ、アーティストと社会を繋ぐような活動をしている。僕らが「アーティスト」と言っているのは、自身のスタンスを持ち、テクノロジーを活用した新しい表現を探究する人たちのこと。その人たちが見聞き、感じた世界を新しい表現に落とし込むことは、新しい認知を掘り起こす。だからこそ、私たちがアーティストと社会を繋ぐことで、新しい認知をつくり出し、社会に提示するチャンスを生み出したい』と説明する。
現在は2022年4月に開廊したデジタルアート専門の展示空間「NEORT++」を始め、オンライン・オフラインを行き来しながら新しいアートの体験構築を模索している。
▲ TORANOMON HILLS – DIGITALSPRINGBOARD seohyo「Connected Topologies」, Asahamiz「コズミック・マグナード」
場所に個性を与え、ストーリーを繋ぐ「サイネージの文脈化」
NEORTが作品の提供先とするのが、都市部を中心に数を増すサイネージだ。この狙いについて、同社では「サイネージの文脈化」という言葉を用いて次のように説明した。
『街でサイネージを見かけるシチュエーションが増えるなか、景観のなかに天気予報や占いのような情報、あるいは広告が流れていくことが普遍化している。 一方で、それらは取り立てて記憶に残るものというより、どんどん流れていってしまう。当社としてはそこへもう少し、文化的な活動を取り入れたい。そのサイネージでどんな表現ができるかというチャレンジはもちろん、パブリックアートという形で作品を残していく、アーカイブしていくことで、未来においても振り返ることのできるような“文脈”を築いていく。その試みを「サイネージの文脈化」と呼んでいる』。
実際に虎ノ門ヒルズ(東京都港区)の情報発信拠点「TOKYO NODE(東京ノード)」やMIYASHITA PARK(東京都渋谷区)で、アート作品の掲出を続けてきた同社。また今年は、KITTE大阪(大阪市北区)の屋内クリエイティブスペースである「AxCROSS」において、「広告募集」をテーマとした作品を募集。全長約18mの大型スクリーンに個性溢れる作品が投影され、大きな注目を集めた。高瀬氏は『アーティストならではの観点でつくり出せる街づくり、みたいなものが定着してくると、街への関心も高まる。アーティストはもちろん、行き交う人もそこへの注目度が上がることで、結果として広告も誘致しやすくなってくるという、これまでに無かった流れもつくれるのではないか』と期待を寄せる。
こうした潮流をつくることでの副次的な効果については、中田氏も次のように話す。
『サイネージには一つひとつ、特徴や個性が必ずある。それを広告の場合は、どちらかというと没個性させることで表現することが重視されるが、そこへ作家の視点・考えが加わり、どういう表現を出すかによって、その場所にも意味が付加されるし、第三者にとっても新たな気づきに繋がる。こうして場所に個性を与える意味でも、私たちを通じて場所や発想を解放することが、その場所にとっても意味が深まることになるのではないか』。
聞けばアーティストの中には、LEDディスプレイの欠けや故障すらも、アートとして扱う事例もあるという。竹元氏も『ビジネスでは経済合理性や効率性が重視されがちだが、それとは異なる視点で物事を見て、創作をしているのがアーティスト。もしかすると短期的な利益を生み出すのは難しいかもしれないが、今の時代を進むなかでは、アーティストならではのモノの見方も、実は大事なピースなのではないか』と、示唆した。

▲ MIYASHITA PARK 北千住デザイン「Brutal Divs.」
▲ DIG SHIBUYA 2025 – PARCOにてNEORTが企画・運営を行ったBYOD²。
「DIG SHIBUYA2026」にNEORTが込める期待
広告を排他するわけでもなければ、アーティストの欲を満たすだけのためでもない。場所に意味を与え、深め、第三者の発見や新たな価値の創出に導くことが、いざ広告を出す番になった時にもプラスに働く。そして同時にNEORTが力を入れるように、作品を“流す”のではなくアーカイブすることでも、見るもの・感じること・生まれる価値を変えていける。この体現をより広域でめざしたのが2026年2月13日から15日で開催される「DIG SHIBUYA 2026」だ。
同イベントはテクノロジーとアートを掛け合わせ、最新カルチャーを体験できるイベントとして2024年に初開催。今回で3回目となるなか、NEORTは昨年に続きオフィシャルプログラムを提供する。高瀬氏は『渋谷の施設やサイネージにも歴史があって、昔はこういう場所だった、こういう変遷があった、といったことを語れる方々がいる。私たちがやりたいのはアートを提供するだけでなく、そうやって語り合う場をつくり、残し、繋いでいくということ。渋谷区共催のイベントでこれを具現化することは、大きな意義を持つのではないか』と期待する。
イベントの規模は、3年目にしてますます拡張する見込みで動いている。同社は「DIG SHIBUYA 2026」の成功を弾みに、来る年もアーティストとともに“新たな認知”を創る旅路に奔走する構えだ。
【問い合わせ】
NEORT(株)
東京都品川区西五反田7-9-5 SGテラス6階
Tel.03-5437-0135
E-mail:info@neort.io
https://team.neort.io/








