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〈2024.1.24〉話題の企業・人物「株式会社レスキューナウ」

危機管理のプロフェッショナルは
情報をいかにして取得・発信するのか。

東京都品川区に本社を構える(株)レスキューナウは、2000年の設立から一貫して危機管理分野でのサービスを展開し、災害時の救援や復旧、平常時の気象情報や鉄道運行状況などの取得に貢献している。これらの概要やデジタルサイネージへの活用について、同社の担当社員に話を伺った。

▲ 緊急時以外の情報ニーズも高く、デジタルサイネージへの鉄道情報の掲出や気象情報の配信が好評。

 

 


レスキューナウの原点とミッション

 

 そもそも同社の原点は、1995年の阪神淡路大震災まで遡る。後に創業者となる市川啓一氏は、日々報道される甚大な被害を前に、その当時普及し始めたインターネットを用いることで、災害復旧の迅速化に貢献できないかと頭を巡らせた。その思いはやがて形になり、会社設立の翌年には災害情報携帯配信サービス「マイレスキュー」を開始。以後、ユーザーの使うデバイスや世の中のニーズに合わせて形を変えながら、一貫して「最新の情報技術を駆使して、危機に対する迅速な救援と復旧、復興と予防に貢献する」というミッションを遂行してきた。

 現在提供している情報は、地震・津波発生時の緊急情報、移動に関わる鉄道の運行情報、そのほか気象を始めとする生活にかかわる情報だ。

 同社の大きな特徴は、発信する情報を自社で作りだしていることである。よってサービスの範囲は流動的であり、例えば、計画停電の相次いだ2011年の東日本大震災は電力供給の状況を、コロナ禍においては都道府県別の感染者数も収集・配信してきた。営業部の長越敬直氏は『私たちは“予定されていた行動が妨げられること”を“危機”と定義づけ、そこに当てはまるものであれば、特に限りはつけていません』と述べ、危機管理情報センターに従事する村松拓海氏も『これまでもお客様からのご要望に応じて、配信する情報を拡充してきました』と加えた。



▲ レスキューナウ危機管理情報センター「RIC24」は東京と大阪にあり、非常時もどちらかで対応できるプロトコルを準備している。

 

 


“イレギュラーの連続”に
対応する体制

 

 さて、それらの情報はいかにして集められ、私たちに届けられるのか。今回の取材では、レスキューナウ危機管理情報センター「RIC24(リックニジュウヨン:Rescuenow Information Center 24)」を実際に見せてもらい、情報の収集から入力、配信までのフローを伺った。

 同センターにはいくつものモニターが並び、テレビやWebサイトを通じて発信される情報が常に映し出されている。そして集めた情報の入力から配信に用いられるのが、同社独自のツールである。村松氏は『配信作業の一部をシステム化し、複数人による人的チェックと組み合わせることで、限りなくミスが起きにくい状態を維持しています』と述べた。国内外の情勢がいつ・なんどき変わるかわからないことを踏まえると、細かい改修も発生しやすいのではないかと懸念すると『仰るように危機とはイレギュラーの連続。仮に汎用的なツールを用いればそれに制約を受けることになりますが、私たちのような“手作り”のツールであれば、状況やニーズに柔軟かつ迅速に対応することができます』と自信を覗かせた。

 続いて勤務体制について尋ねると、同センターの大川義弘氏は『私たちは3交替制を取っており、24時間365日を通して誰かが必ず稼働している状態。また、国内外の情勢・状況を「通常」から「警戒・支援」、「非常」と三段階にラベリングし、それに応じたリソース配置を行っています』と説明した。ただし、必ずしもセンター内に人の姿があるとは限らない。実は多くの社員がリモートで勤務し、オンライン上のチャットや音声通話でやり取りを重ねていたのだ。『コロナ渦にテレワーク体制へ切り替えたことで、場所を問わない柔軟な勤務体制となりました。常にセンターが稼働している状態を担保することが、私たちにとって何よりも重要』と村松氏は補足した。このセンターは東京都品川区の他に大阪府内にも設けられ、非常時もどちらかで対応できるプロトコルを準備している。



危機に対する迅速な救援と復旧に貢献するために

 

 こうして危機管理情報センターでつくられた情報は、媒体に応じて加工できる形にして各所へと配信している。営業部の倉橋 栞氏は『サイネージに流す事業者様にも、Webサイトに掲出する方にも、全て同じデータを送っています。その情報から端的な表示を生成したい人はAの部分を使っていただき、短い文章にして配信したい人はBの部分を使っていただく…と言った形で、用途によって使い分けていただくことができます』と述べた。この“デバイスを問わず届けられる基礎情報”を作り届ける力こそ、同社が強みにする点だ。緊急時以外の情報ニーズも高いそうで、とりわけデジタルサイネージへの鉄道情報の掲出や気象情報の配信が好評だという。

 終わりに今後に向けた展望を伺ったところ、倉橋氏は『扱う情報の種類を増やしていきたい』と意気込み、『デジタルサイネージにも気象情報や鉄道情報などのニーズが高い生活情報を流すことによって、サイネージ自体の求心力もアップします。代理店様の中には既にパッケージとして販売してくださっているところもありますが、今後もより多くの方にご活用いただけるよう働きかけたいです』と話した。不可避の危機に、今後もレスキューナウが頼もしい存在となりそうだ。


【問い合わせ】
(株)レスキューナウ
東京都品川区西五反田7-20-9 KDX西五反田ビル1階
E-mail:b-info@rescuenow.co.jp
https://www.rescuenow.co.jp


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