種類豊富なツールを組み合わせて
利用者に最適なマシンを提供する。
2023年7月、(株)ミマキエンジニアリング(以下、ミマキ)がEFI社のRoll to Rollプリンター「D3r」のデモンストレーション機を設置。ミマキは2016年からEFI社のプリンターを販売しているが、更なる販売強化に向け、細やかな顧客提案をするため、同社JPデモセンター(東京都品川区)に導入した格好だ。今回はEFI社の「VUTEk Dシリーズ」と、ミマキのフラットベッド型ハイエンドカッティングプロッター「CFXシリーズ」、宣伝のぼり旗の生地の再利用を実現する脱色技術「ネオクロマトプロセス」について、営業本部 グローバルマーケティング部の原田智充氏に話を伺った。
多様な付加装置を搭載した
多目的なプリンター
スーパーワイドRoll to Rollプリンター「VUTEk 3-5rシリーズ」の魅力のひとつは、ランニングコストが抑えられることだろう。他社製品と比べても少ない電力で動かすことができ、さらにインクの濃度が濃いため、少ないインク量でしっかりと印刷することができる。原田氏は、実際に使用した感想を以下のように述べている。
『ミマキ製のサイングラフィック用UVプリンターと同様に、クリアインクと白インクが用意されており、最大三層プリントができます。
クリアインクはグロス(ニス塗り)やマット(艶消し)表現機能に加え、カラープリント上にフルサイズでプリントすることで、トップコートの役割として使用可能。プリント条件や媒体によりますが、海外では5年耐候保証が認められています。
マシンの付加装置が多く、今後のオペレーターの作業環境変化も意識されていると実感します。インラインのXカッター(左右方向のメディア裁断)とYスリッター(前後方向の裁断)を標準搭載しており、UVプリンターが得意とする「即・後加工可能」に「プリント中自動裁断」を付加することで3m幅超の媒体プリント後のハンドリングが大変容易になり、オペレータの負担軽減につながります。
5層印刷(透明フィルムへの両面プリント効果)に代わる両面プリント機能も充実しており、今後益々需要増が見込まれるウィンドウフィルムや電飾看板の生産もサポート可能。「UVはミマキ」の製品ラインアップに相応しい強力な一台だと実感しました。
また、同シリーズの超高速モデルQシリーズは、プリント中の画質チェック機能やノズルチェック機能が搭載されており、自動運転による省人化も可能となります』。
ハイエンドモデルの
カッティングプロッター
続いて、2023年10月に発売を予定しているフラットベッド型カッティングプロッター「CFXシリーズ」を紹介したい。
「CFXシリーズ」の大きな特徴として、2種類のカットモード、3つのサイズ、4種類のツールが同時搭載できるマルチヘッド、8種類のユニットツールがある。
まずは「2種類のカットモード」についてだが、これは圧力で制御するモードと深さで制御するモードの2種類だ。例えば段ボールをカットする際、同じ圧力でカットしても、縦横によって仕上がりが異なってしまう。そういった場合、縦と横でカットモードを変更すれば品質を揃えることができる。
「3つのサイズ」については、幅が2.5mで、奥行きをプロッター導入後に拡張可能であるということ。奥行き1.3mはサイン向けで、什器、イベントディスプレイやアクリル・アルミ複合板のサインパネルなどの製作に適している(ルーター機能は2024年春以降に拡張予定)。
「4種類のツールが同時搭載できるマルチヘッド」は、標準搭載のペンユニットに加え、レシプロユニット、タンジェンシャルユニット、Vカットユニットを同時に装着できる。
そしてもうひとつ、「8種類のユニットツール」。これはマルチヘッドに搭載する、ユニットの先に取り付けるツールのことで、振動ツール、レシプロツール、押切りツール、Vカットツール2種類(角度45度固定と角度0から45度選択)、罫引きローラー3種類(16mm、26mm、60mm)がある。用途に合わせて選択可能な、自由度の高いカッティングプロッターと言えるだろう。
さらに原田氏は『トンボセンサーが新しくなったことも特徴のひとつです。これまで電気センサーを使っていたのですが、今回はカメラユニットを使っています。これにより、印刷面の裏からカットする場合にも印刷物を裏返すだけで位置が合います』と説明している。
なお、「CFXシリーズ」に対応するソフトウェアは2つ用意されている。1つは「FineCut/Coat9」。これは、出力データ作成やマシンへの出力をIllustrator®上で行えるプラグインソフトウェアだ。カッティングプロッターを購入すれば、無償提供を受けられる。もう1つは「CAM LINK 2」。CADソフトで作成されたDXFファイル形式データを読み込み、カッティングプロッターのデータに変換、出力できる。こちらは別売りのソフトとなる。
『CADを使っている方が多いわけではないのですが、当社の加工機をずっと使っていただいているお客様の中にはCADを使っている方もいらっしゃるので、「CAM LINK 2」が必要不可欠になるんです。
これまで無印の「CAM LINK」を扱っていたのですが、今回、「CAM LINK 2」になり、CADデータのバージョンは最新版まで対応します。また、特殊な材料の加工をするときにカット条件を細部までこだわって設定でき、更にデータベースとして管理できるため、職人技術の継承に役立ちます。
Illustratorでも、DXFフォーマットを読み込めますが、線分データの管理方式により寸法がずれることがあるため、フルサポートとは言えません。「CAM LINK 2」ではそういったことはなく、完全対応と言えます』と原田氏。
「CFXシリーズ」はフラットベッド型カッティングプロッターのハイエンドモデルと位置付けられているが、これついて原田氏は次のように語る。
『“ハイエンド”と言うには、3つの条件をクリアしなければならないと思いました。1つ目が速度です。業界トップクラスのヘッドの移動速度が秒速1mなので、まずこれを実現しました。
2つ目はVカットをサポートしていることです。当社としては初めての機能となります。
そして、3つ目が加工するときの圧力です。今まで当社のフラットベッドタイプの加工機は圧力が5kgでしたが、同シリーズでは圧力30kgを実現しています。Vカットを行う際、最初から最後まで同じ深さできれいにカットするためには30kgの圧力が必要なので、これに対応しました』。
SDGsの取り組みに貢献する
生地の再利用技術
ミマキは、2023年6月にイタリア・ミラノで開催された国際繊維機械展示会「ITMA 2023」で、捺染ポリエステル生地から昇華転写インクを脱色し生地を再利用する技術「ネオクロマトプロセス」を紹介した。
同技術は、脱色用溶剤を捺染ポリエステル生地に染み込ませて熱プレスし、吸収材にインクを転移して脱色するというもの。2024年の夏ごろを目処に製品化を進めており、現在はマシンの設計段階だという。
想定されているのは、布をセットすると自動で脱色用溶剤が散布され、熱をあてて脱色するという作業を自動で行う機械だ。そして、脱色後はすぐにプリントが可能で、そのまま印刷に移行できる。『脱色を行えるのは、昇華転写インクを使ったポリエステル生地に限りますが、20回ぐらいは脱色・印刷を繰り返し行うことができます』と原田氏。
なお、サイン業界では、のぼり旗などに活用するのが良いと原田氏は言う。『のぼり旗は短いと3週間ほどで役目を終え、捨てられてしまうことが多いです。小売りブランドのオーナーさんは、企業(コーポレート)SDGsをどのように訴求するかを考えていると思うので、まだきれいなうちに捨てられてしまうのぼり旗は再生利用に最適なのではないかと考えます。SDGsに取り組みたいという方には、ぜひ「ネオクロマトプロセス」を試していただきたいと思います』。
インクや脱色用の溶剤を吸収した吸い取り紙もさらに脱色して再利用することで燃えるゴミの発生を抑え、加えて、水の利用や排水による水質汚染を最小限に抑えることができる「ネオクロマトプロセス」。今の時代に、非常にマッチした技術であり、今後の展開が期待される。
【問い合わせ】
(株)ミマキエンジニアリング
長野県東御市滋野乙2182番地3
Tel.0268-64-2281
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