変わりゆく市場で勝ちゆく術は
“自分も変わっていくこと”
2023年6月に実施された「デジタルサイネージジャパン2023」において、「DSJ 2023 Booth Award」グランプリに輝いた(株)イノベーターワン。この連載では先月号に続き、同社代表の久保島 力氏に躍進の裏側を尋ねる。今回は広告配信事業、そしてテレビ事業について詳しく話を伺った。
▲ イノベーターワンの一気通貫の広告配信運営システム。
▲ イノベーターワンの顔認識、AI解析システム。広告毎の視聴数、視聴者性別や年齢層等の集計データが即時に抽出できる。
一気通貫を実現した広告配信運営事業
前号でも触れたように、イノベーターワンは現在5つの事業を展開する。広告配信ならびにその事業運営、インタラクティブスマートボード、3Dメタバース、テレビ、そしてLEDなどのソリューション企画だ。
その中で今回、優位性を強調したのが広告配信運営事業である。久保島氏はその特徴について『一連の業務を一社で担うことにより、コストパフォーマンスを高めている』と述べた。言うは易し、配信事業を一気通貫で成し得るには、様々な下ごしらえを必要とする。映像を映し出すディスプレイはもちろん、配信のためのシステム、映像を受信する側のシステム、そして配信中・後のレビューに向けた数値を取得する必要もあれば、それらを可能とするネットワーク環境も求められる。
もちろん、これらの各々を専門とする業者に頼むことも可能だが『3、4社の抱き合わせになると、どうしても融通のきかない部分が出てくる』と久保島氏。そこで先述のように、全て自社でできるだけのシステムと設備を整えたのだ。
こうした広告配信事業において、ユニークな機能を持つのがレビューの側面だ。STB(セットトップボックス)受信機を新たに開発した同社は、CMSシステム、顔認識モジュール、LTEルーターを3 in 1で実装。別途開発したAI顔追跡4Kカメラとともに用いることで、広告を視聴した時間や人数等を自動で判別、顔解析AIにより年齢や性別の即時データ化にも成功している。久保島氏は『配信を滞りなく行うのは当たり前。プラスアルファの提案ができることで、たとえ広告の全体数が変わらなかろうと、仕事がもらえるだけの準備を整えた』と自信を覗かせた。
▲ 自社開発によるインタラクティブスマートボードやLEDディスプレイ、4Kスマート液晶テレビなど。配信事業を一気通貫で、安定して行っていくための映像ソリューションも万全の体制だ。
自社ブランドがAndroid TVの認証を取得
以上と並んでもう一つ、事業の柱として紹介されたのが、テレビにまつわる事業だ。同社ではチューナーを持つスマートテレビと、チューナーレステレビの開発から製造、販売を手掛けている。中でもチューナーレステレビにおいては、自社ブランドであるMiramage(ミラメージュ)製品の一つとして開発、今後の量販店での販売を目指す最中である。
久保島氏がここに自信を覗かせるのは、同社のスマートテレビがグーグル社よりAndroid TVの認証を得ていることにもよるだろう。Android TVとはグーグル社が提供しているテレビ用のプラットフォームで、この搭載によりユーザーはAndroid向けのアプリをテレビで利用することができる。天気やニュースの確認、音楽の視聴はもちろん、YouTubeやNetflixなどの動画配信アプリもテレビの大画面で閲覧できるのだ。高精細な映像が楽しめる点など、ハード面の仕様にこだわっていることは言うまでもない。なおかつ、これが自社での製造によって市場より安く提供できる点もメリットだ。
また、これらテレビ事業に久保島氏はto B向けの展開も目論んでいる。同氏は『テレビをベースとして、特定のオーダーに応じてカスタマイズができる』と話し、一例としてホテルでの活用を挙げた。多くの宿泊施設では、客室のテレビに同施設からのインフォメーションを流すことがある。そうした際の機能の追加、逆に一部機能の削除にも応じることができるのだ。『なおかつこれを、限られた費用感で実現しているのが私たち』だと久保島氏は胸を張った。
▲ Miramage(ミラメージュ)のブランドを冠したスマートテレビ。
アイデアで人を惹きつけ、青写真を形にする
そもそも広告配信事業にせよ、テレビ事業にせよ、参入企業の数は既に多く、決して易しい市場ではない。一見、後発組としてトライするには厳しい環境にも思えるが、これについて久保島氏は『変わりゆく市場で自分も変わっていくことができれば、十分勝負できる』と断言する。実際に同社は市場のニーズを敏感に捉え、価格優位性を保ったまま、アイデアを具現化している。
ここで忘れてはならないのは、同社が決して歴史の長い会社ではないということだ。それなのになぜ、これだけのスケールで事業が展開できるのか。久保島氏は『私のアイデアで多くの人を惹きつけ、社内外から叡智を集結させているから』だとこの解を述べる。
『これだけお金を出すからやってください、というのではなく、私のアイデアに共感してもらって“それならぜひ一員になりたい”と仕事を受けてもらっている。その方が夢中になってやってくれるから、良いものが限られた費用でできる』。
これこそが、久保島氏がトップにいる所以であり、イノベーターワンが並々ならぬエネルギーに溢れている証なのだろう。
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