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〈2025.11.13〉まちの新たな体験価値を創造、 WonderScapeが「空間メディア事業」開始

場の価値の最大化と持続可能なにぎわい創出へ、
新会社で描く「空間メディア」のあり方とは。

東京建物(株)、(株)読売広告社、(株)プライムプレイスの3社は、空間メディア事業を主とした新会社「WonderScape(株)」を設立。各社の強みを生かしながら、新しい価値の創造に挑んでいる。新体制での取り組みについて、WonderScape取締役の池亀立哉氏と山本直澄氏に話を聞いた。

▲ 2025年6月にWonderScapeが本格運用を開始した「OTEMACHI TOWER VISION」(写真右端)。平日には1日約6万人も通行する通路上にあり、視認性も非常に高い。



デベロッパーとしての
まちの新たな魅力づくりを模索して

 

 東京建物の新規事業開発部に従事する池亀氏は、WonderScape設立の背景について次のように語る。
 『当社は近年、デベロッパーとして“ハードからソフト”へというテーマのもと、エリアマネジメントやブランディング活動に積極的に取り組み、まちやビルの賑わいづくりを行ってきた。一方で、それらは一定のコストがかかるため、新たなマネタイズ手法を確立し、サステナブルなあり方を目指すことが必要になっている。その潮流のなかで、今回の新事業、そして会社設立というものが見えてきた』。

 これに加え、東京建物が都立明治公園(東京都新宿区)やlivedoor URBAN SPORTS PARK(正式名称:有明アーバンスポーツパーク、東京都江東区)、Hareza池袋(東京都豊島区)といった場での公園整備・管理に取り組んできた背景も重なる。これらの空間において同社は、単に建築物を生み出すだけではなく、利用者や地域の方々に提供する「体験」に着目してきた。

 また、『イベント誘致やネーミングライツのような、新しいマネタイズにも気づかされ、ビジネスの幅が広がった』とし、『海外ではDOOH(デジタル屋外広告)が都市の風景を大きく変えている。そうした現実も踏まえ、今が空間メディア事業に本腰を入れるタイミングだと判断した』と話す。



協業を後押しした
「アセットの活用」への関心

 

 ここにジョインしたのが、広告会社として場の利活用に経験やノウハウを持つ読売広告社だ。東京建物とは先述の公園整備事業などで関わりがあり、話を聞いた同社もすぐに話を前向きに捉えた。

 読売広告社にも属する山本氏は『広告会社も変化を迫られている。クライアントのGAME CHANGE PARTNERを標榜する当社では、パートナーのアセットを収益化するサポートを模索し始めていた。まさに公園という場も、パートナーが持つアセットの一つ。そうした空間をいかに収益化していくか、今後一緒に考えていける存在ができることは非常に有難い話だった』と振り返る。池亀氏も『私たちのコンセプトに、すぐに理解を示してくれた読売広告社の存在が、非常に頼もしかった』と、パートナーシップまでの経緯に触れた。

▲ 東京建物では公園の整備や管理にも取り組んでいる(写真は都立明治公園)。



新会社で運用する「OTEMACHI TOWER VISION」の狙い

 

 こうして手を取り合った両社は2025年6月にWonderScapeを設立、まもなくして大手町タワー(東京都千代田区)内での「OTEMACHI TOWER VISION」の運用を開始した。

 同ビジョンのサイズは縦4,000mm×幅7,000mm。平日には1日約6万人が通行する通路上部にあり、高い視認性を誇る。池亀氏は『東京建物グループのマテリアリティ(重要課題)において、「事業を通じて実現すべき社会との共有価値」として“「場の価値」と「体験価値」の創出”を掲げている。その文脈も加味しつつ、この「OTEMACHI TOWER VISION」が起点となって偶然の出会いや、新しい体験に繋がることを目指したい。とりわけ大手町はビジネスパーソンが多く、LEDビジョンが駅の連絡通路上にある。だからこそ、ビジネスパーソンをターゲットにした広告はもちろん、空間全体を使って賑わいを生むような仕掛けづくりができたら』と期待する。

 実際に同社では、LEDビジョンに限らず、イベントスペースや柱・壁面を活用したジャックメニューを用意。その上で同氏は『想像を超えるような使い方も、今後はクライアントと具現化していきたい』と述べた。


▲ WonderScapeが運用する大手町の広告媒体。LEDビジョンのほか、柱型の媒体やイベントスペースなどを活用したジャック広告展開も可能だ。



賑わいを生み出す新しい体験・発見の創造を

 

 WonderScapeでは今後、様々なエリアでの事業展開を模索している。池亀氏は『「Scape(まちの風景)」に「Wonder(驚き・不思議)」を与えたい、という社名に込めた思いをベースに、なおかつそれを各々のベニュー(会場、地域)ごとに追究したい。大手町には大手町独自の成り立ちがあるように、各都市・エリアにはそれぞれ固有の歴史やストーリーが存在する。私たちが目指すのは、そのストーリーを最大限に活かすとともに、その延長線上にはない新しい価値を創り出すこと』とのスタンスを強調。山本氏も『単純に「ここにサイネージがつきました」という話ではなく、空間全体で捉えて、そこに賑わいを生み出すことができたらと考えている。我々が先陣を切って“街として生活者との情報接点”を演出していきたい』と展望を述べた。

 発足からわずか4ヵ月、WonderScapeにはまちの風景をポジティブに動かすエネルギーがみなぎっている。



【問い合わせ】
WonderScape(株)(ワンダースケープ)
東京都中央区八重洲1-4-16 東京建物八重洲ビル
E-mail:info@wonderscape.co.jp
https://wonderscape.co.jp

 

 

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