S&Dセレクション

〈2024.10.7〉インクジェット出力現場の声(サインアーテック)

環境問題に取り組みながら
インクジェット出力ビジネスの原点を追求する。

30台以上のインクジェットプリンターを保有し、サイン・ディスプレイを中心とした大型印刷をはじめ、壁紙やロールスクリーン、ブラインド等のインテリア商材への印刷などを行う(株)サインアーテック。今回は執行役員の山林資和氏に、昨今の同社の仕事の状況や傾向、SDGsへの取り組みについて訊いた。

▲ サインアーテックで2台稼働中の「Colorado 1650」(キヤノン社製)。壁紙プリントにも活躍する。



新たに工業製品への印刷を開始、
インテリアへの印刷依頼も増加

 

———昨今の貴社の事業内容に変化はありますか?

 新たに医療防災関連、自動車関連、重機関連などの工業製品や、インテリア系カタログ製品などの印刷を始めました。現在、当社はサイン・ディスプレイの仕事が全体の約75%、壁紙やロールスクリーンなどインテリア系が約20%で、工業製品は5%ぐらいの割合になっています。

———インテリア関連の仕事も増えているようですが、壁紙印刷にはどのようなプリンターを使っているのですか?

 壁紙にはCanonの「Colorado(コロラド)」(UVプリンター)を使うことが多いです。ラテックス系のプリンターを使った壁紙出力は少なくなり、最近は障子紙、合成皮革など特殊素材に印刷することが増えました。
 「Colorado」には、「FLXfinish」という機能があって、LED硬化ランプの照射タイミングを制御することでインクを変更することなく、グロス調・マット調に仕上げることができ、付加価値の高い壁紙の製作が可能になります。



その他3▲ サインアーテックでは30台以上のインクジェットプリンターと、同じく30台以上の後加工機が活躍する。




太陽光発電、エコ商材…
様々な角度から環境に配慮する

 

———貴社は工場にソーラーパネルを設置したり、SDGsにも力を入れていますよね。

 2014年から使用している工場の屋根に設置した売電用の太陽光発電に加え、今年1月には従業員駐車場の屋根を自家発電用に建設し、これらが工場全体で発生する電力量の7%を補っています。
 また、当社はカーボン・オフセットにも取り組んでおり、エネルギー起源の間接排出を指す「Scope 2」をゼロにしています。カーボンニュートラルを達成することで、工場からの温室効果ガス排出をゼロにする「ゼロ工場化」を目指しています。

———環境に配慮した新しい商材はありますか?

 「PETボトルクロス」は、新しい商材であり、すでに定着した商材でもあります。これは、廃棄されたPETボトルを再ペレット化し、リサイクル100%の原糸で作られたインクジェットクロスです。
 「PETボトルクロス」の他にも、水や木をほぼ使うことなく製造できるため、石油由来原料を大幅に削減することができる「LIMEX(ライメックス)」、高密度ポリエチレンでできており、リサイクルが可能な「タイベック」、使用済みの牛乳パックや紙コップ等から作られた100%再生紙の「ミルクパネル」などもあります。
 SDGsが謳われるようになり、エコ商材は増えましたが、SDGsの波がひと段落し、定着した商材と定着しなかった商材があるなと感じます。
 定着した商材に共通することは、多くの方が納得できる“価格設定”と“グラフィックの品質”だと思います。この2つが両立できていると、「エコ商材だから」という理由がなくても使ってくれます。だから、「エコだ」といって使っているうちは、まだまだ「エコ商材」が定着したとは言えません。

———エコ商材はコストが上がるというイメージがあります。

 そうですね。SDGsという言葉が登場した頃は、多少価格が高くても「エコ商材だから」という理由で売れたのですが、もうその理由だけで売っていくのは難しいと思います。もちろん多少は高くなりますが、高額になりすぎては普及はしないでしょう。
 そんな中でも「PETボトルクロス」は、品質も遜色ないですし、金額も極端に高いわけではありません。だから、「エコ商材だから」ということは関係なく、選ばれるお客様は多いです。
 「PETボトルクロス」は、ロールスクリーンやブラインドなどに使うことが多いです。印刷には、ミマキエンジニアリングの「JV34-260(溶剤系プリンター)」を使っています。

——— 一方で、ターポリンが環境によくないと言われていますが、この辺りはどのように捉えているのでしょうか?

 環境問題が騒がれる中で、ターポリンが悪者扱いされて、やはり当社としても「ターポリンをやっています」と言いづらくなってしまいましたね。
 ただ、かつてダイオキシンの問題が出た際などにも「ターポリンはもう終わり」といわれた時期もありましたが、結局まだ続いています。コストやサイズ、印刷の品質、加工のしやすさ、耐久性などを考えると、ターポリンに代わる素材がまだない状況です。軽いとか、エコだとか、一部だけを見ればターポリンより優れた素材はもちろんあるのですが、全てを覆せるような素材はまだないです。
 実際、今でもターポリン出力の仕事はたくさんいただいています。あまり言いたくはないですが、ターポリン以外の商材を提案しても結局、価格でターポリンが選ばれることが多いんです。巨大幕など幅広の案件の場合には、ジョイントを避けるため5mの幅広ターポリンが選ばれることが多いですね。

———街中を見てもターポリンは多くありますよね。

 当社もそれを良しとしているわけではないのですが、なかなか減らすことができていないのが現実です。それでも、SDGsの取り組みを続けていきたいと思っており、エコ商材については、常に情報収集を行っています。


▲ サインアーテックの工場と駐車場の屋根にはソーラーパネルを設置。このソーラーパネルで、同社の工場で発生する全電力使用量の7%をカバーしている。

▲ サインアーテックが製作・提案する円錐サイン「POPコーン」。店舗販促POPやイベントでの誘導ツールとして、また空間演出などにもおすすめだ。なお、同社では「POPコーン」の販売代理店を募集中とのこと。





インクジェット出力ビジネスの
原点に立ち戻る

 

———今後、どのようなビジネス展開を考えていますか?

 インクジェットビジネスの原点に帰り、顧客窓口の対応力と生産力の両輪の強化で、総合的な“顧客対応品質”を上げていきたいと考えています。具体的には、生産性を高める設備投資をベースに、見積納期回答の迅速化、加工部門の21時間体制など案件の受け入れ体制を総合的に強化していきます。
 厳しいコストと超短納期・多品種生産という、何かと慌ただしいサイン・ディスプレイ業界ですが、少しでもそこに携わる皆様のお仕事が円滑に進む様に貢献していきたいと思います。



【問い合わせ】
(株)サインアーテック
埼玉県飯能市茜台3-2-1
Tel.042-975-1234 Fax.042-975-1235
https://www.signartec.co.jp

 

 

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