効果的な活用と滞りない運用で
ディスプレイの価値最大化を図る。
(株)小田急エージェンシーと小田急電鉄(株)は、新宿駅南口に裸眼3Dに対応した大型LEDサイネージ「新宿サザンテラスビジョン」を新設。そのディスプレイ選定から取り付け、運用までを手掛けるのが(株)セイビ堂だ。同社代表取締役社長の阿部慎也氏に、その詳細や狙いについて訊いた。
▲ 2024年4月より新宿駅南口で稼働中の裸眼3D対応の大型LEDサイネージ「新宿サザンテラスビジョン」。
常設で20年稼働し続けられるLEDビジョンへ
企画当初、『当社に相談があったのは、ハードウェアとその取り付け工事のみだった』と話す阿部氏。一方のセイビ堂は、LEDビジョンの開発・導入はもちろんのこと、サイネージへ広告を配信するためのシステム、配信枠の自動買い付けを行いながら柔軟に運用するためのプラットフォームなどを提供できる。そこで同社は「新宿サザンテラスビジョン」においても運用面を含めた受注を提案、現在のように一貫して担うスタイルに至っている。
ハード面の話に戻れば、当初はL字型のディスプレイが想定されていた。しかし同氏は『JR新宿駅の南口から出た時に、すぐに見えるのが今回の場所。平面のディスプレイは他で多く見られることからも、R型のディスプレイで惹きつけてはどうかと提案した』と、当時を振り返る。設置されたディスプレイは縦3.5m×横19mで、『軽くて、長持ちして、消費電力も抑えられる』同社のモデル。6mmピッチ、SMD(表面実装)の仕様で、人通りの多い甲州街道付近に設置された。
▲ 縦3.6m×横19mのL字型LEDディスプレイを、新宿サザンテラスのなかでも特に交通量が多く、甲州街道から最も近い低層店舗の塔屋に設置。連日、多くの通行者の注目を集めている。
効率的な広告配信に向けたRAPの導入
こうした屋外サイネージのハード選定について尋ねると、同氏は『少しオーバースペック気味にチョイスして、7〜8割のパワーで稼働し続けられるようにすることが多い』と明かした。その心を尋ねれば、『お客様の多くは耐用年数を10年くらいと捉えているが、私たちの場合は常設でも20年ほど使い続けられる。メンテナンスは必要になるが、それでも一度取り付けたサイネージを長く使い続けられるメリットは大きい。もし交換となれば、費用的にも労力的にも大変だからこその配慮だ』と話した。
また、ソフト面での工夫を尋ねると、阿部氏はセイビ堂独自の「ロボティクス・アド・プラットフォーム(RAP)」の導入を挙げた。この特長について同氏は次のように説明する。
『広告主側が、自社の広告を届けたい属性やタイミングなど条件を設定し、それに当てはまった時だけ広告を配信する。具体的には、配信期間や予算、時間帯、場所など基本的な情報に加え、年齢や性別などターゲットの詳細や、天気・紫外線・花粉の情報などが設定可能だ』。
このシステムを導入した背景として『サイネージの広告は、満枠になることはなかなかない』点を挙げ、『RAPの場合、広告料金は実際に配信された回数で決まる。広告出稿する側からすれば、無駄なく広告を打ち出すことができ、出稿への敷居が下がる』と話した。
場の活用でディスプレイの価値向上を
今春より営業放映が開始された「新宿サザンテラスビジョン」は、早速恵まれた立地を生かして屋外プロモーションへ活用されている。自動車メーカーのケースでは、サイネージに試乗予約のできる2次元コードを掲出、併せて眼下の広場にはリアルな車体を展示した。阿部氏は『新宿サザンテラスビジョンは、場の活用とセットで考えている。今回の事例のようにイベントとのコラボレーションができれば、サイネージ自体のバリューを上げていくことにも繋がる』と期待を寄せた。
直近では超指向性スピーカーを実装予定だと述べ、『このスピーカーはピンポイントで“その場所”にだけ音を届けられるという特長がある。音は、サイネージにとっては極めて重要な要素。サイネージを見てもらうトリガーとして、当社でも“音”は大事にしていきたい。とりわけ今回の立地はすぐ近くで車が往来していて、音が聞こえにくい。音量を上げない形で届けられる方法を模索できれば』とした。
▲ 「DSJ 2024 Booth Award」の準グランプリを受賞したセイビ堂ブース。ブーステーマは“DIGITAL SIGNAGE 3.0”。
“競合”から“協業”できる関係性の構築へ
今後について触れると、阿部氏は『勢いとしては屋外向けディスプレイの方が勝っているが、屋内用についても優位性を出していきたい』と話し、昨今の主流となりつつあるCOB(Chip on Board)タイプのLEDディスプレイでも『ファインピッチかつリーズナブルなものを発売できれば』と意気込んだ。元々同社は「ウルトラハイレゾリューション」と呼ばれる高解像度(1mmピッチ)、高輝度かつ滑らかな映像美を誇るモデルを屋外用として展開してきた。この立ち位置を生かし、なおかつ『高精細になると、どうしても消費電力の大きくなる傾向がある』点を踏まえて、省電力のモデルを差別化に据えたい構えだ。
また業界に対しては、こんな思いも口にした。
『サイネージの会社は当社以外にも数多くある。それらが競合になるのではなく、協業できる関係性でいられたら良いと思う。サステナビリティな関係性を築いていきたい』。
確かにサイネージを取り扱う企業は、依然として国内外ともに多い。必ずしもその一部だけが勝ち残る未来ではなく、時に手を取り合い、“驚きと感動あふれる豊かな社会”を創造するのも良いに違いない。
【問い合わせ】
(株)セイビ堂
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