サイネージ広告の審査と運用から
プラットワークスが描く近未来。
交通広告や屋外大型ビジョンなどのサイネージ運用を代行する(株)プラットワークス。その件数は年々増加しており、それに伴って広告掲載可否を事前に考査する意匠審査においても、同社の知見を求める依頼主が増えている。「運用特化型企業」の同社が今後目指す立ち位置について、オペレーション統括部門長の曽山佳亮氏に訊いた。▲ 東京・東陽町のプラットワークス本社業務センター。徳島県のサテライトオフィスと合わせ約100名がメディア運用業務に携わる。
全国14,000面以上のサイネージを運用代行
現在、全国14,000面以上のサイネージ運用代行を手掛けるプラットワークス。同社は地上波を含めた放送事業者の広告考査代行も行っており、その数は年間約5,000本。その状況を踏まえ曽山氏は『広告市場が活況ならば、デジタルサイネージ運営者にとって広告を収益源にしたいのは言うまでもない。その一方で、広告表示には副作用がつきもの』と語る。
その“副作用”とは、SNSでの炎上を始めとする、予期せぬ評判や反響だ。『スマートフォンが大きなファクター』と同氏が話すように、昨今は手元のデバイスですぐに撮影や投稿ができる環境下にある。広告主やサイネージ運営者にとってネガティブな影響を防ぐには『事前の意匠審査がより重要になる』と、曽山氏。同社では放送分野で豊富な映像広告審査経験を持つチームの体制をサイネージ広告にも展開し、需要の増加に備えている。
めざす立ち位置は“セントラルキッチン”
広告の審査に限らず、放送や大手動画配信サービスのコンテンツ運用代行も手掛け、多岐にわたってメディア事業の足回りを支えるプラットワークス。曽山氏は、自社のめざすポジショニングを“メディア事業のセントラルキッチン”と表現する。
一般的にセントラルキッチンとは、飲食業界で複数の店舗や施設で提供される食事の調理を1つの拠点に集約し、調理済みのものを配送する仕組みを指す。同氏は次のように語る。
『これを放送やサイネージでの広告配信に例えて話すと、材料である広告素材は広告代理店やポスプロから上がってくる。それを依頼主の指定通りどこの媒体へ、どの順番で出すかコントロールしているのが当社でありたい。店舗などサイネージ設置場所からすれば、配信スイッチを押して待っているだけの状態が理想』。
こうすることで、本来のセントラルキッチンと同様、複数クライアントによる複数の媒体への効率的な配信業務を手助けする。『当然、調理の世界と同様に、掲出先サイネージに応じた基準やフォーマットなど微調整は必要になる。私たちセントラルキッチン側の習熟度を上げながら、広く対応したい』と意気込んだ。
他社とのアライアンスで大きく広がる可能性
プラットワークスの直近の動きに目を向けると、同社は2024年12月に(株)東北新社の放送送出事業部門をM&Aにより(株)シン・プラットプレイアウトとして100%子会社化した。
シン・プラットプレイアウトはその主業務として、BS・CS向け放送のコンテンツ送出事業を手掛けている。これまでコンテンツの「放送前の準備業務」を主としてきたプラットワークスが、新たに出口部分までをカバーすることで、『業務を依頼する媒体運営者側から見れば、一気通貫で委託が可能となり、コストやプロセスの圧縮というメリットが見出せる』と、曽山氏は期待する。
このほかにも他社とのアライアンスとして、「デジタルサイネージ ジャパン2025」では、自社のブース出展にイッツ・コミュニケーションズ(株)を招聘する。サイネージを含めたメディアのトータルインテグレーターに当たる同社を迎え、媒体のプランニングと運用の連携によるメリットを訴求していく。
また、専門セミナーでは、意匠審査をテーマに(株)東急エージェンシーと共同でサイネージ広告における“成功の鍵”を探る。日本最大級のサイネージ集積地「渋谷」で広告を展開する同社とともに、媒体運営状況や具体的な意匠審査事例に触れ、両社の持つナレッジを提供しながらサイネージ広告運用の将来に繋げる構えだ。※ テレビスポットCM、通販番組、屋外広告等の表現考査で年間に回答した延べ件数。
交通広告や屋外大型ビジョンを取り巻く未来
プラットワークスは今後も交通広告や屋外大型ビジョンなどの運用を手掛けるにあたり、2つのトピックスを提示した。
1つは“屋外大型ビジョンなどに映し出される映像が、いかに空間演出の役割を果たすか”という点だ。日本に限らず海外でも、アイコニックな映像をめがけて人々がその場に足を運んだり、“映える”風景の一部としてカメラを向けたりする傾向は強まっている。曽山氏は『人の目が向けられる時間は必ずしも長くない。サイネージには瞬間的なインパクトが重要』であること、また『観光客の発信やSNSの話題づくりも意識して、演出のあり方を考える必要がある』ことを示唆。ただ、『インパクトが重要だからこそ、広告としての基準をクリアするかどうかの審査も同様に重要だ』と付け加えた。
もう一つ同氏が触れたのが、広告の意匠審査におけるAIと人の役割分担である。『AIを使ったスクリーニングは確かに便利。だが、最終的なイエス・ノーの判断をするのは人間』と予見し、『AI活用は視点拡大や時短になりうる。ただ、AIが審査した広告に対して何らかの判断を出したとき、「でもこういう考え方もありますよね」といった混ぜ返しができたり、「これでいきましょう」といった意思を持てたりするのは、人間でしかない。それが広告の売上を最終的に決定する要素なのだから』と理由づけた。
サイネージ広告の市場規模は近年拡大しており、その運用も複雑を極める世の中にあっては、『運用代行に求められる知見や効率化のステージは上がってきている』と、曽山氏。人々の目に留まるスクリーンや、そこに映し出されるコンテンツと比べて、同社が手掛ける運用代行業務は必ずしも目立つ立ち位置にはないかもしれないが、むしろその重要性は、ますます高まっていくに違いない。
【問い合わせ】
(株)プラットワークス
東京都江東区東陽7-5-8 東陽町MLプラザ6階
Tel.050-3538-1820
https://plat.works▲ プラットワークス オペレーション統括部門長の曽山佳亮氏。(同社が運用代行を手掛けるサイネージが多数集まる東京・渋谷で)