放送業務経験者の担う“サイネージ運用業務”とは
〜(株)プラットワークスの語るアウトソーシングの意義〜
放送・配信・デジタルサイネージの運用業務を担う(株)プラットワークスは、昨年に引き続き、「デジタルサイネージ ジャパン(DSJ)」に出展。会期中のセミナーでは、「サイネージ運用業務をプロ企業に任せるメリット〜アウトソーシングの現場から〜」と題し、市場環境や同社の事業概要について語った。
【プラットワークスの事業領域】
サイネージ事業者の“足回りサポート”を担う
昨今、目覚ましい普及を遂げるデジタルサイネージだが、言うまでもなく映像をつくっただけでは情報が視聴者に行き届くことはない。オペレーション営業部長の曽山佳亮(そやま よしあき)氏は『実際に、導入後の運用段階を考慮しきれていない、いわゆる見切り発車も多い』とした上で、『当社が放送局や配信事業者にしているのと同様、サイネージ事業者の“足回りサポート”ができれば』と意気込んだ。
放送業務経験者でもある曽山氏は『そもそも映像メディアの事業者が力を入れるべきは、コンテンツの制作や広告の獲得だ』と強調する。視聴者はそれらがきちんと届けられることで必要な情報や娯楽を享受でき、きちんと届けられて初めて事業者の顧客満足度も向上するのだ。運用業務は相応に重要だが、きちんと「届けるため」の業務に割ける社内リソースには限りがある。だからこそ、効率化すべき運用業務部分をアウトソーシングしてはどうかと提唱するのだ。
具体的な放送業務を見てみると、広告考査や専用端末へのEPG〔Electronic Programming Guide(電子番組表)〕入力、放送後の監視などがそれに該当する。同社には曽山氏に限らず放送業務経験者が多く在籍しているため、細かなチェック、放送のための準備時間の厳守などには自信がある。またチーム単位で業務を担うことで、複数の目で確認作業を実施し、特定の業務が属人化しないというメリットも生みだしている。
▲ プラットワークスの東陽町業務センター(東京都江東区)の様子。
共通のフィルタリングで広告考査もクリア
ここで疑問に思うのは、同じ映像メディアであっても、サイネージなど媒体ごとに異なるシステムや独自の放映基準がある中、それに応じた対応が満遍なく可能なのか、という点だ。これについて曽山氏は次のように答えた
『例えば、意匠審査である広告の考査を当社が代行する旨をお伝えすると、「媒体ごとに異なる基準があるのに、問題ないのか」といった質問が寄せられます。ただ実際は、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は共通ですし、そのほか蓄積された過去事例に照らし合わせることで、一定のフィルタリングができます』。
実際に同社が今年5月までの過去1年間で広告考査を実施した放送用広告映像1,423本のうち65%が注意・改稿・謝絶等に該当し、その見解が委託元の事業者と相違したケースは僅か3%にとどまる。
また、『地上波放送レベルの考査から導く見解は、不特定多数の目に触れるサイネージ広告にも有用』とし、サイネージ事業者からの依頼にも期待を寄せた。 なお、媒体各社が情報入力に用いるシステムについても『システムを借り受けて業務代行することが前提だからそのまま受託可能』とし、『システムが異なっても業務内容は基本共通。当社はシステムごとの特性に配慮して業務を組み立てるし、一人が複数のシステムを扱うことも当たり前にできている』という。
【表現考査(意匠審査)における統計】
【派遣vsアウトソーシング】
デジタルサイネージの特性と属人化の警鐘
こうした運用業務は、大手の放送や配信事業者では派遣スタッフを雇用して賄う場合も多い。曽山氏は『もちろんそのメリットは否定しない』とした上で、『当社のような運用に特化した企業が担うことで、柔軟なチーム体制や情報と映像のワンストップ対応など “専門”ゆえのアドバンテージが活かせる』と話した。
殊にデジタルサイネージの場合、全国共通の放送や配信と違い、設置の場所やそれに応じたコンテンツ切り替えの頻度が今後増すことは容易に想像でき、それに応じて業務負荷も増すことが予想される。仮にその負担増を既存のスタッフだけで担うとなれば、オーバーフローになりかねない。
対してプラットワークスでは、先述の通りチーム編成を柔軟にして業務を担当している。デジタルサイネージの広告市場規模が右肩上がりにあるからこそ、属人化した運用業務がビジネスの硬直化を招くことへの警鐘を鳴らしているのだ。
安定したオペレーション体制を確保するための選択
今後、デジタルサイネージ業務を取り巻く環境は、コンテンツの多様化や演出の複雑化に加え、運用業務を職人技で担ってきた人材の高齢化と相まって、自社だけで乗り切るにはますます難しいフェーズを迎える。曽山氏は『当社のような企業へアウトソーシングしていただくことで、実はスタッフを一人雇うよりも安価なコストで運用を代行することが可能です。ただここで敢えて強調したいのは、単なるコストカットのためだけではなく、安定したオペレーション体制確保のためにその選択をお勧めしたいということです』と話した。
もちろん何から何まで外部へ委託することで、突発的な変更や一刻を争う判断が遅れてしまうリスクもある。曽山氏は『放送や配信という事業性を考えれば、それは起こって当然。だからこそ私たちも委託元の事業者内で行った方が円滑な領域については、委託元様に対応をお願いしています』と、業務の棲み分けを強調する。その一方で、放送や配信を担う事業者にとって、自分たちも気づかなかったような業務上のボトルネックは確かに存在する。『効率化のポイントは、サイネージを運用していらっしゃる方々にも同様に存在します。それらを認識してもらう機会を作れれば』と、同氏は“運用のプロ”としての相談役に自信を覗かせた。
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