S&Dセレクション

〈2023.4.10〉Dタワー西新宿・エレベーターホールのLEDビジョンによる映像演出

独自のメソッドで実現する
より良い環境づくりとは

西新宿の公園通りの高層オフィスタワー「Dタワー西新宿」がリニューアル。エレベーターホールには超高精細LEDビジョンが設置され、今春より運用が開始されている。この空間を手掛けた(株)モデュレックスに話を聞いた。

撮影:KOZO TAKAYAMA

 

 

“統合環境ソリューション”企業
(株)モデュレックス

 

 モデュレックスは遡ること1973年に設立、照明器具・光学機器の開発や、それらを用いたライティングデザインを基軸として出発した。
 ただ、現在はそれだけにとどまらない。これまで培ってきたものをバックボーンとしながら、“統合環境ソリューション”を提供する企業として歩み始めているのだ。

 今回、「Dタワー西新宿」に施されたLEDビジョンも、同社の活躍が照明器具にとどまらないことを示唆するが、企画本部 企画部長の平野 幹氏はこれについて『“照明だけ”“LEDビジョンだけ”ではなく、当社が双方を統合的に担うことで、ベストな空間づくりを提供できる』と強調した。


オフィスビルの一角に
LEDビジョンの映像演出を施す

 

 今回の「Dタワー西新宿」でモデュレックスは、エレベーターホールのLEDビジョンを担当、リノベーション自体の方向性が「自然を感じられるような空間」とあったことから、四季折々の日本の景色を映し出すことのできるビジョンを設けたのだ。さらに同社は外観のアッパー照明や1階打ち合わせルーム、室内植物のアッパー照明なども担当している。
 ディスプレイには、エレベーターホールの利用者からの見え方、そして予算を踏まえ、1.9mmピッチのGOB(Glue On Board)タイプが採用された。

 環境システム開発室室長である三上保雄氏が『人が触れられるような場所でも安心して使える』と話すディスプレイは、通常のLEDパネル(SMD方式)に対して樹脂コーティングの表面保護を施し、耐衝撃性、表示面防水性、防塵性を高めた仕様となっている。『こうした規模のLEDビジョンがオフィスビルに設置された例は、他になかなか見ない』と三上氏が話すように、商業施設や映画館ではなく、オフィスビル、さらに言えばエレベーターホールの壁一面を使った映像演出は稀有に違いない。

▲ エレベーターホールの壁一面を使った、LEDビジョンによる映像演出。映像を通して、オフィスを訪れる人へ癒しを提供するとともに、待ち時間のストレス軽減にも貢献している。(撮影:KOZO TAKAYAMA)

 

 

 

自然な形で空間へ誘う
モデュレックス独自の照明設計技法を採用

 

 現在(2023年3月取材時点)このビジョンには秋冬の風景として、冬の海や滝、雪景色などが映し出されている。近くに春夏の映像にも切り替えることを想定中だ。こうした映像を通してオフィスを訪れる人へ癒しを与えるLEDビジョン。同社がこだわったのは、設置そのものにとどまらない。照明器具メーカーとしてのバックボーンがあるからこそ、周囲の照明あるいは外光との輝度バランスを見ながら、また質感や空間全体の高級感を担保できるよう、映像の出力に調整を重ねている。
 さらには、いざビルへ足を踏み入れた人々をいかに自然な形で空間へと誘い、奥のエレベーターホールまで引き込むかには、同社独自の「ライティングナチュラライゼーション」の技法がいかんなく発揮された格好だ。

 ソリューション本部 本部長の服部剛司氏はこれについて『私たちはメーカーとして照明器具を提供する、あるいはそれを用いて単純に空間を明るくする、ということだけを目指しているわけではありません。空間の中には人工光もあれば自然光も入ります。全体のバランスを見ながら、どの照明をどの場所に、どの程度配置するか、統合的に設計しているのです』と話す。そして『この技法も「視野角内ライティングモデュレーション」として当社オリジナルのメソッドを確立しています』と強調した。

撮影:KOZO TAKAYAMA

▲ ビル外観のアッパー照明や1階打ち合わせルーム、室内植物のアッパー照明などもモデュレックスが担当。LEDビジョンだけでなく、照明も含め、統合的に空間をデザインしている。(撮影:KOZO TAKAYAMA)



建物全体に付加価値を
与える活動を具現化していく

 

 こうしてモデュレックスが統合された環境の重要性を強調するのには、背景に従来抱えていた業界のジレンマがある。例えばA社で照明を、B社で映像を、などと分業する場合、どうしても各々が自分たちの“利”を求めてしまい、“真のベストアンサー”が具現化されにくいのだ。営業本部 本部長の石渡規雄氏は『空間全体にとって、より良いものが選択されるべきだと私たちは考えます。そこで当社が五感に触れるもの全てを手掛けることで、お客様にとってベストなものを届けることができると考えているのです』と述べた。

 また、プロモーション室長の森田大介氏は今後に向けて、『人工光だけでなく、自然光、映像コンテンツなどが及ぼす影響全てを、デザインを基軸に統合し、統合環境ソリューションとして、建物全体に付加価値を与える活動を行ってまいります』と話す。5年以上前から徐々に芽吹きだした活動は、今回の事例のように着実に花を開こうとしている。

 

【協力企業】
ベントール・グリーンオーク(株)
インテリアデザイン LINE-INC.
動画制作 o-flat inc.


【問い合わせ】
株式会社モデュレックス
東京都渋谷区恵比寿南1-20-6 第21荒井ビル
Tel.03-5768-3131
https://www.modulex.jp

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