S&Dセレクション

〈2022.3.10〉大判インクジェットプリンター「330 Series」

20年以上にわたり蓄積してきた
技術力を結集させ、新しい価値を追求。

 

産業用インクジェットプリンターやカッティングプロッター、3Dプリンターを手掛ける(株)ミマキエンジニアリング(以下、ミマキ)は2022年2月24日、大判インクジェットプリンター「330 Series」を新製品として世界同時発表、同年4月より販売開始予定だ。

 

 

 

筐体の設計・開発を一から行った

 

 ミマキは、2002年に世界初のエコソルベントインクジェットプリンター「JV3-130S/160S」を市場に投入して以来、高画質・短納期を求めるユーザーのニーズに応えるべく、常に“新しさと違い”にこだわり、新たな価値を持ったプリンターを市場に投入することで、業界をリードしてきた。

 今回発表した「JV330-130/160」(プリント専用機)、「CJV330-130/160」(プリント&カッティング機)は、“Give your creativity a Glow up(想像力に輝きを)”をキャッチコピーに、同社が20年以上にわたり蓄積してきた技術力を結集させ、新しい価値を追求し、筐体の設計・開発を一から行ったという。サイングラフィックス市場のユーザーから愛される“3”を冠する新たなモデルとして市場に投入する「330 Series」。エントリーモデル「100 Series」、スタンダードモデル「300 Series」に続いてラインアップに加わったミドル・ハイエンドモデルが、見る者を圧倒する画質と高生産性に加えて、搭載された高付加価値機能でユーザーの省作業・省人化をアシストする。

 

 

印刷条件ごとにインクの着弾の順番を変更させる技術

 

 「330 Series」は、印刷条件ごとにインクの着弾の順番を変更させる印刷技術「Mimaki Weaving Dot Technology(MWDT)」(特許出願中)を新たに搭載。同技術により、プリントヘッドのわずかな個体差や調整の微妙なズレから生じる意図しないスジやムラを抑制できる。

 また、色管理をするための標準フォーマットである入力プロファイル「Deep Color Natural」を今回新しく用意。このフォーマットを用いることによって、市場実績のある同社エコソルベントインク「SS21」の広い色域を余すことなく活用し、従来では共存しづらかった鮮やかなベタ※1表現と自然なグレー階調、自然な肌色を同時に表現できる。印刷速度は4色搭載時(C,M,Y,K)の標準モードで21.0㎡/h、8色搭載時(C,M,Y,K,Lc,Lm,Lk,Or)で13.2㎡/hと高い生産性を誇り、同社のフラグシップモデルにふさわしい高画質に加え、高生産性で仕事の効率化を推進する。4色搭載時の高速モード(30.0㎡/h)を使用して、900×1,800mmのサイン(塩ビ)を出力する場合、1時間当たり約10枚の出力が可能だ。

 なお、同一セグメントのLAN環境内であれば、スマートフォン※2やパソコンからマシンのパネル操作、エラーチェックなど稼働状況の確認ができる「Mimaki Remote Access(MRA)」に対応。離れた場所からでも安心してプリンターを稼働させられる。

※1 1色でムラなく塗りつぶすこと。
※2 iPhone対応、Android後日対応予定。

 

 

 

 

 

効率的な作業環境づくりに貢献する高付加価値機能

 

 「330 Series」の高付加価値機能として、標準搭載された「XYスリッター」と「メディアチェンジャー」の2つの機能を紹介しよう。

 「XYスリッター」は、印刷後に連動し、縦横全辺をカットする機能で、印刷したメディアを取り外すことなく自動で裁断加工が行える。これにより、後工程作業を大幅に短縮するとともに、今まで手作業で行っていたカット作業のスペースの削減ができる。
 次に「メディアチェンジャー」だが、これは最大3本までメディアを同時に取り付けることができ、軽い力でハンドルを回すだけでメディアを交換できる機能だ。メディア交換の手間を軽減し、より効率的な作業環境づくりに貢献する。

 また、新しくなった機構では、大容量の2Lインクパックを外すことなく撹拌(かくはん)可能なインク供給ユニットと、メディア巻取精度の向上のため、これまで片側のみに搭載されていた駆動モーターを左右両側に搭載することで、巻取にかかるバランスが安定化、安全で長時間の連続稼働を実現する。もちろん、MAPS4(Mimaki Advanced Pass System 4)※3、NCU(Nozzle Check Unit)※4、NRS(Nozzle Recovery System)※5、DAS(Dot Adjustment System)※6など、安定稼働をサポートするミマキの印刷機能は各種継承されている。

 「JV330」「CJV330」ともに、最大対応メディア幅の異なる「-130」(最大幅1,370mm)と「-160」(最大幅1,620mm)をラインアップ。同社では、屋内外の大型看板や広告などのサイングラフィックス用途を対象に、シリーズ全体で年間1,500台(全世界)の販売を見込んでいる。

※3 MAPS4:パスの境界線をグラデーション調に印字することで、バンディング(横縞)や色ムラ、光沢縞を軽減する機能。
※4 NCU:ノズルの状態をセンサーで自動検知し、ノズル抜けを発見した場合は自動クリーニングを実行する機能。
※5 NRS:ノズルクリーニングでも解消されないノズルトラブルがある場合に自動で不良ノズルを他ノズルに代替し、安定した画質でプリントを継続させる機能。
※6 DAS:従来手作業で行っていたドット位置補正や送り量補正を自動化する機能。

 

▲ 昇華転写インクジェットプリンター「TS330-1600」

 

 

昇華転写機でも「330 Series」発表

 

 「330 Series」としてもう一機種、昇華転写インクジェットプリンター「TS330-1600」も「JV330-130/160」「CJV330-130/160」と同時に発表されている。

 同機は「JV330」「CJV330」同様、「MWDT」を新搭載。印刷速度は、4色インクセット(Bl,M,Y,K)のDraftモード(600×600dpi、2Pass)で69㎡/hと、従来機(TS55-1800)比で約138%の印刷速度を実現した。1,200×2,400mmの製作物を出力する場合、1時間当たりの出力数は従来機の約13枚から約18枚へと向上している。
 また、従来機などでも好評だった、ランニングコストの低減を実現する2つのオプション品「10kgインクタンク供給ユニット」と「ミニジャンボロールユニット」を「TS330-1600」用にカスタマイズし搭載可能。「10kgインクタンク供給ユニット」は、大容量の10㎏インクタンク※7が装着可能なため、標準の2Lインクパック使用時と比較して大幅なランニングコスト低減が図れる。

 そして「ミニジャンボロールユニット」は、低ランニングコストを実現した約2,500m巻のミマキ純正転写紙「Mimaki Vision Jet-X Mini-162」が装着可能な繰り出し装置だ。これらは、ランニングコスト低減とあわせて、インク・メディアの取り換えによるダウンタイム軽減とユーザーの作業負担軽減にも貢献してくれるだろう。もちろんNCU、NRS、DASといった機能も搭載されているので、長時間の連続稼働も安心して行える。

※7 ブルー、マゼンタ、イエロー、ブラックのみ。

 

 

 

 

 

「ECO PASSPORT」認証を全色取得している環境対応型インク

 

 「TS330-1600」には他にも長尺巻き取りの搬送ズレ抑制、さらにユーザビリティを向上させる新機能が搭載されている。これまで片側のみに搭載されていた巻き取り用の駆動モーターを左右両側に搭載することで、負荷を分散し巻き取る力を強化。また、メディアをV字にカットすることにより、巻き取り用の紙管に対して真っ直ぐ1点でテープ止めが可能になる「V字カット機能」を追加した。あわせて巻き取りの補助をする「端面ガイド」の小型化を行い、ユーザー自身で取り付け・取り外しが容易に行えるようになった。

 加えて、新規メンテナンス機構として、プリントヘッドのノズル面に付着した不要なインク滴の除去率を高めるために「布ワイパ」を採用。従来の「ゴムワイパ」と比べてプリントヘッド周りへの飛散インクを低減し、メンテナンス性の向上とともに清潔さを保つ。メンテナンススペースの拡大や、本体内部にLED照明を標準搭載するなど、より見やすく、使いやすくなっているので、その辺りも要チェックだ。

 搭載インクは市場実績のある「Sb411」「Sb410」※8インクを採用。これらは、繊維製品の生産時に使用する染料・顔料・助剤・仕上げ加工剤を対象とした、化学物質に対する安心・安全の認証として、国際的安全規格である「ECO PASSPORT」認証を全色取得している環境対応型インクとなっている。

 インクセットは4色、6色、7色、8色を用意。基本のブルー、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色に加え、ライトブルー、ライトマゼンタ、ライトブラック、蛍光ピンク、蛍光イエローから仕事に合わせて6色、7色、8色の選択が可能だ。プリント幅は、テキスタイル・アパレル用途で使用頻度の高い1,600mmに対応している。ミマキでは、テキスタイル・アパレル用途を対象に、年間1,500台(全世界)の販売を見込んでいる。

 ミマキの営業本部 JP事業部 事業部長である室町直紀氏は、2月24日に開催されたオンライン新製品発表会において、『今回の新製品は、東京デモセンターを皮切りに全国16ヵ所に随時設置し、デモ環境を準備した上で、各地域のお客様に向けて実機お披露目展を開催したいと考えています。また、コロナ禍により外出自粛が求められる昨今、より多くのお客様に当社製品を体感していただけるように、オンラインデモの対応、地域に根付いたバーチャル展示会を展開していきます』と語った。

※8 蛍光イエロー、蛍光ピンクのみ。


【問い合わせ】
(株)ミマキエンジニアリング
東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル6F
Tel.03-6371-2822
https://japan.mimaki.com

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