収益とブランディングを両立、
広告媒体運営の新たなかたちを示す。
2024年9月、JR川崎駅に「THE KAWASAKI VISION(ザ カワサキ ビジョン)」が誕生し、大きな話題を呼んだ。同媒体の運営を行っているのは(株)DeNA川崎ブレイブサンダース、設計・製作・施工は杉本電機産業(株)が担当、導入されたLEDビジョンはシャープの製品だ。今回は「THE KAWASAKI VISION」に深く関わるこの3社に、ビジョンの設置に至るまでのエピソードや現状、今後の展開などを訊いた。▲ JR川崎駅北口通路の南側壁面のビジョン(H1,710mm×W24,320mm)と北側壁面のビジョン(H1,710mm×W12,160mm)の2面からなる「THE KAWASAKI VISION」。
クラブチームがOOHを運営、新しい収益の柱をつくる
2030年にはスポーツをはじめ、さまざまな興行を開催できるアリーナが川崎エリアに誕生する。国内最大規模のサイズを誇る「THE KAWASAKI VISION」は、JR利用者が新アリーナへ向かう際に使う通路に設置されている。
この場所にはもともと、Jリーグ・川崎フロンターレの内照式看板が設置されていた。ビジョン設置にあたり、内照式看板を液晶に替える案や、これまでとサイズは同じまま内照式看板からLEDビジョンに変更する案などさまざな提案があったという。しかし、やるならインパクトのあるものにしたいというDeNAの想いから、高精細で大画面のデュアルビジョンの導入が決まった。
「THE KAWASAKI VISION」を見た人の反応について、DeNA川崎ブレイブサンダース 営業部 営業グループリーダーの板橋大河氏は以下のように語る。
『横浜DeNAベイスターズが日本一になったとき、静止画ではあるのですが、ロングビジョンを活用して選手20〜30人くらいを並べて表示したんです。その時は、SNSでかなり話題になっていました。また、成人式の日には、式典終わりに「THE KAWASAKI VISION」に映る川崎ブレイブサンダースの推しの選手と一緒に撮った写真が多数アップされるなど、ファンの方の様々な投稿を見ることができました』。
Bリーグ・川崎ブレイブサンダースは、新しい収益の柱をつくることを目標にしており、「THE KAWASAKI VISION」はその一端を担っている。同チームは現在、5,000人を収容できる「とどろきアリーナ」をホームアリーナとしており、杉本電機産業やシャープなど多くのスポンサーがついているが、広告枠の数は決まっており、広告媒体としての収益には限界があった。しかし、クラブチームが独自にOOHを運営することで、収益を得ながら、チームのアピールもできる。川崎ブレイブサンダースのやり方は、理にかなっていると言えるだろう。
国内最大規模の超高精細LEDデュアルビジョン
「THE KAWASAKI VISION」は、1.26mmピッチの超高精細LEDを使用し、JR川崎駅北口通路の南側壁面のビジョン(H1,710mm×W24,320mm)と北側壁面のビジョン(H1,710mm×W12,160mm)の2面で国内最大規模のLEDビジョンとなった。採用されたのはシャープ製のCOB方式LEDディスプレイだ。同製品の採用経緯について、杉本電機産業 新規事業開発室 室長の濱本拓馬氏は以下のように話している。
『高精細で高品質なもの、かつサイズが大きいので導入コストも重要課題として、LEDビジョンメーカー数社に絞って検討を進めていました。短工期での完成を目指していたので、映像送出の事前検証が可能か?というのも重要なポイントでした。シャープさんは小田原にテクニカルセンターがあり、5×5の25台であればサンプルを仮組し、映像送出テストの間、貸してくれることになったので採用を決めました。これだけ大きな解像度でデュアルビジョンを製作するのは初めての試みでしたが、「工期内に現場を完成させ、映像を送出する」という当社意向に伴走してくれる可能性が高いと感じたのがシャープさんだったと思います』。
これに対して、シャープマーケティングジャパン ビジネスソリューション社 経営戦略統轄部 ビジュアルソリューション営業推進部 主任の山本 晋氏は次のように続けた。
『LEDビジョンのサイズが大きくなると、もちろん金額も大きくなるので、ご納得の上で使っていただくために、まずは体験いただくことが重要だと考えています。 当社は国内メーカーであるため、製品を導入していただいた後のケア、そして品質の部分にも重点を置いています。そういったところも加味していただき、ありがたく思います』。
LEDビジョンは設置後に、予想もしなかったトラブルが起こることがある。そこに目を向けると、システム保守の部分は当然考慮すべきポイントとなるだろう。▲ 大型ビジョン2面による広告放映の訴求力は非常に大きい。
スピーカー4台を使った音声による広告訴求も可能
「THE KAWASAKI VISION」のコンテンツ配信及び管理には、シャープのソフトウェア「e-Signage」をベースに、同ビジョンに合わせてカスタムしたシステムを採用している。
また、南面にはスピーカーを4台設置。10時から18時の間のみ音声ありの映像放映が可能となっている(2025年3月14日現在)。今後は朝と夜の利用者の多い時間帯にも音を出せるように、話し合いが進められているという。アリーナでアーティストのライブなどが開催されることを考えると、やはり音が流せるということは大きなメリットと言える。
川崎を“選ばれる街”にするため、
“選ぶ理由”をつくる必要がある
「THE KAWASAKI VISION」の運用が開始されて半年が過ぎたが、これから先はどのような展開が予定されているのだろうか。これについて板橋氏は次のように語る。
『広告代理店の方も含め、「THE KAWASAKI VISION」を知らない方がまだまだ多いです。まずは多くの人に実物を見てもらいたいです。ビジョンが素晴らしいことはもちろん、通行量も十分あることがわかると思います。しかし、まだ“川崎が選ばれる街になっていない”という感覚があり、“川崎を選ぶ理由”をつくる必要があると思っています。新しいアリーナができるということは、大きな理由の一つになります。
「THE KAWASAKI VISION」は、川崎市のポテンシャルを体現したビジョンであると考えています。なぜ川崎市に広告出稿するのか、アリーナの活用で言うと、なぜ川崎市でライブをするのか、「THE KAWASAKI VISION」がそういった理由づくりの手助けになればいいなと考えています』と語る。
また濱本氏は『他のメディアへ広告出稿しているクライアントが、THE KAWASAKI VISIONにも広告出稿する際、特殊解像度だと入稿ハードルが高く、コンテンツ制作の時点で億劫に感じてしまうのでは?と考えました。入稿ハードルを下げる工夫をしており、16:9の画角は維持しつつ、指定サイズでコンテンツ制作いただければ入稿可能です。川崎は、都内に比べると広告単価が安いので、都内+川崎に広告を出そうと思ってもらえたらありがたいですね。きっと満足していただけると思います』と自信を示す。
「THE KAWASAKI VISION」は、地域とスポーツ、エンターテインメントをつなぐ新しい拠点になりつつある。クラブチームが自ら運営することで、収益とチームのブランディングを両立させる取り組みは、新たなモデルケースとしても注目されるだろう。川崎の街に根付き、発展していくであろうこのビジョンが、今後どのように活用されていくのか、引き続き注目していきたい。
【THE KAWASAKI VISIONへの広告出稿に関する問い合わせ】
(株)DeNA川崎ブレイブサンダース(担当:戸塚)
E-mail:k-vision@brave-thunders.com
https://kawasaki-bravethunders.com/lp/thekawasakivision/