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〈2025.9.2〉“テクノロジー×マーケティング” イノベーターワンが新たな挑戦へ

xR・LEDビジョンで実現する“体験型ビジネス”と
変革を支えるマーケティング視点の新戦略。

LEDビジョン、xRスタジオ、クラウド型映像配信といったソリューションで注目を集める(株)イノベーターワン。その成長戦略の要として、デジタルマーケティング分野で豊富な実績を持つ大関 綾氏をCMOに迎えた。同氏が指摘するように時代は過渡期にあり、あらゆる業界で従来手法からの転換を求められている。中でも大関氏は「体験が価値を生む時代」にフォーカスを当て、テクノロジーとマーケティングが融合する新たな挑戦に踏み出している。

▲ イノベーターワンのCMOに就任した大関 綾氏。



時代の変遷から見出したアライアンスの意義

 

 イノベーターワンでは、かねてから高精細なLEDビジョンやインタラクティブスマートボードを製造・販売。それに限らず、自社のハードを用いた広告等配信事業を一気通貫で行い、効率性や価格面での優位性を保ってきた。さらに近年では、自社のショールーム内にxRスタジオを新設。代表の久保島 力氏は『今後もバーチャル空間上でのVR、AR、そしてそれらを用いたコミュニケーションや経済活動などが活発化していく。すなわちxR市場は拡大し、新たな生活スタイルや空間メディアを生み出すに違いない』と予測し、いち早くその分野にも着手した格好だ。

 こうして高い技術力と具現化力を誇っていた同社が、さらなる躍進を見据えて招き入れたのが、大関氏である。大関氏のバックグラウンドを紐解くと、弱冠14歳でビジネスオーディションに出場し、17歳で起業。ウェブマーケティング・ウェブ広告事業を主とし、殊にSNSが時代を席巻してからは、ソーシャルマーケティングにも力を入れてきた。イノベーターワンへの参画に際し、大関氏は時代の変遷に言及する。

 『多くの方が実感する通り、AIだったり、イノベーターワンも着手するxRだったりと、新しいテクノロジーが急速に広まっている。この5年がおそらく転換期になる』。

 そう話すと『現時点では影響力の大きいSNSも、5年10年経ったときにどうかと言えば、今ほどの求心力を持たないのではという予測も立った。だからこそビジネスを続けていくうえで、新しいアライアンスに意義を感じた』との背景を説明した。


▲ 球体LEDやタッチパネル式の透明有機ELサイネージなど、イノベーターワンのショールームでは多様なデジタルサイネージソリューションを展示している。



“インタラクティブ”への
可能性と自社の強み

 

 こうしてイノベーターワンに新たな風を吹き込むべくジョインした大関氏は、同社のハードウェア製造から運用、マネタイズまでを一気通貫で支援できる体制をコアコンピタンスに、今後の戦略を練っている。『多くの競合他社は技術提供で終わってしまうが、当社では導入後の収益化まで責任を持ってサポートする』と同氏は強調すると、『技術を売るのではなく、お客様のビジネス成功を売る。これが当社の差別化戦略』と語った。

 その上で、今後のキーワードには“インタラクティブ”を掲げた。『現代の世の中は情報が氾濫し、かつそれを一方的に与えられているような環境下。ユーザーが疲れて離れ始めていることは、エンゲージメント値の低下にも見て取れる。今後はxRのような技術も取り入れながら、インタラクティブに体感する、経験する、参加し合うといったところに人々の興味関心がシフトするのでは』と予測すると、『これに伴いボトルネックとなりうる、ハード面の整備において、イノベーターワンが発揮できる手腕は大きい』と胸を張った。

 先に触れたように、同社ではショールーム内の壁面に縦3.5m×横3.5mのLEDディスプレイを2つ並べ、床面と合わせてバーチャルな空間を描き出すxRスタジオを具現化している。同氏は『こうした設備が今後ライブパフォーマンスや商空間などに取り入れられれば、物理的な障壁を越えた体験提供が叶う』と話すと、『新規性が高い今だからこそ、テナント様や代理店様が積極的に取り入れることで、独自の競争力が備わるのでは』と示唆した。

 加えて大関氏が意気込むのは『プロダクトアウトからマーケットインの提案に力点を変えていきたい』という点だ。確かにイノベーターワンでは、従来から高性能なハードウェアや高いレベルでのシステム構築を強みとしてきた一方で、導入を検討する企業にとっては、活用イメージや導入メリットが具体的に思い描けない懸念があった。そこで今後は、「クライアントの提供する商品やサービスに合わせ、ハードの活用やシステムのあり方を具体的に企画化した提案」を行い、自社や顧客が得られるメリットを想像しやすくすること、あるいは「ハードを導入してからマネタイズするまでの、ロードマップの提示」を加えることで、参入障壁を下げることを一例に挙げた。こうすることで、従来以上に幅広い分野でのパートナーアライアンスに期待が持てると、同氏は見据える。



▲ ショールームの一角に設けられたxRスタジオ。壁(縦3.5m×横3.5m)2面と床面(3.5m×3.5m)のLEDディスプレイで構成されたこのバーチャル空間では、風景(映像)がそこへ立つ人をシームレスに包囲。スタジオにいながら、まったく違う場所にいるかのようなリアルな映像が完成する。



体験価値や生活の選択肢を広げるxRの可能性

 

 今後の市場動向に話を移すと、大関氏は『没入型の体験がもっと広がっていくはず』と予測し、『現時点では通信環境やハード面での障壁が拭えない』とも補足した。ただ、同社のような企業が先陣を切って事例を増やすことで、それを支える環境も徐々に整備されていくだろう。

 目下で実現を望む領域としては、『商空間へのバーチャル店舗の導入。限られたスペースでも、仮想空間上に商品を並べたり、アバターが接客したりすることで、設営などに関わるコストも圧縮できる』と期待を寄せる。また『教育においてもインタラクティブな体験が必要』と、同氏は示唆する。聞けば、講演を依頼されて教壇に立った際に『情報が一方的に入ってくるばかりの講義スタイル、またテストの点数という第三者の設けた評価軸で価値が決まっていってしまう』ことに危惧を抱いたのだそうだ。だからこそ『例えばキャリア教育、職業体験などの場ではxRスタジオを使ったシミュレーションだったり、そこにVRゴーグルを取り入れた疑似体験だったり。そこで単純に情報を受け入れるだけではなくてインタラクティブなコンテンツにすることで、理解や興味を深めるチャンスを醸成できる』とのアイデアを語った。

 こうしたアイデアには、具現化への障壁としてコストがつきものである。設営・撤収に関わる費用はもちろん、電気代や保守関連費も発生するだろう。だがこれについても『xRスタジオセットを購入していただくのではなく、レンタルの形を取ることでハードルを下げられる。あるいは導入後のマネタイズまでプランとして提示することで、“掛け捨てではない価値の訴求”ができれば、道は拓ける』と話す。

 大関氏らイノベーターワンがこれらのビジョンを描くのは、必ずしも自社のためだけではない。『人の体験価値だったり生活の選択肢だったりを広げていくような事例を、xRスタジオなどを用いて増やしていければ、社会にとってもプラスになっていく』と話すと、新体制での力強い一歩を踏み出すことを約束した。



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