頂点を志すイノベーターのスピード感と丁寧さ。
ハイエンドなインタラクティブスマートボードやLEDビジョンなどを企画・開発し、サイン・ディスプレイ業界で頭角を現す(株)イノベーターワン。その事業やマインドに迫る当連載では、最終回に営業部の林 圭助(はやし けいすけ)氏と上小家 明美(かみごや あけみ)氏を迎えた。引き続き代表の久保島 力(くぼしま ちから)氏に同席いただきながら、各々の考える戦略や展望を尋ねた。
▲ インタラクティブスマートボードのデモンストレーションを行う上小家氏。
スピードを持った革新者であるために
これまでも紹介してきたように、広告配信ならびにその事業運営、インタラクティブスマートボード、3Dメタバース、テレビ、そしてLEDなどのソリューション企画と、幅広い事業を手掛けるイノベーターワン。その営業の一角を担う林氏は、業界全体を見渡し、『ディスプレイや配信を取り巻く技術は、進化のスピードが非常に速い。先週出た技術が、今週には世界中に広まっている感覚』と話す。その上で『様々なお客様、商材に触れて、日々の接点からニーズを引き出す。そこから得たアイデアは、即日の情報収集で具現化に向けて動き出す』と自身の姿勢に触れた。これを聞いていた上小家氏も『当社のスピード感は目を見張る。感覚的に、ある日持ち上がった話が、翌日には80%形になっている』との実感を口にした。
イノベーターワンが独自で築き上げた情報ネットワークは国内外に張り巡らされ、特に昨今の技術進歩を牽引する中国とは密な体制を取っているという。こうした機動力を支えるキーワードこそ、同社が冠する“イノベーターワン”という社名だ。組織を率いる久保島氏は『イノベーター、すなわち革新者になること。ただ、それだけじゃない。“ワン”と付けたのは革新者としてナンバーワンを目指すという、私たちの覚悟の現れだ』と一層の力を込めて語った。
丁寧な仕事に支えられた認知と拡販
一般的な話ではあるが、スピードが優先されると、そこで造成されたものはどうしても質の劣ることが多い。ましてや台数を量産する体勢に移ろうものならば、個体差が生じるリスクにも繋がる。ただ、誰よりもそれを許さないのが久保島氏だ。『とにかく丁寧に。製品そのものだけではない、ラベル一つ取っても最後まで丁寧につくりこむ』とのスタンスを強調し、『1台も100台も、今後つくるであろう100万台も、全て同じ思いでやっていきたい』と話した。
そして、出来上がった製品を全国にPRする社員たちもまた、久保島氏を追うかのようなバイタリティで拡販を続ける。上小家氏は問い合わせのあった企業や教育機関を中心に巡回し、インタラクティブスマートボードの普及に努める最中だ。同社のインタラクティブスマートボードは、双方向通信を始め様々なスマート機能を持ち、ウェブブラウザの検索結果を画像で取り込んだり、受講者の持つPCやスマートフォンの画面を表示したりといったことも可能だ。同氏は『ただ機能を説明するだけでなく、使い方がイメージつくように具体例を出しながらデモンストレーションをしている。大学や専門学校などでは最新の授業形態を取り入れたいというニーズも高く、問い合わせも多い』と述べた。林氏も従来の電子黒板にはなかった機能に手ごたえを感じていると話し、『GIGAスクール構想(※)もあって児童・生徒はタブレットPCを一人一台持つ時代。従来品に比べて高性能なスマートボードを導入することで、一層インタラクティブな授業が可能になる。今後は小中学校への展開も期待したい』と付け加えた。
(※)2019年に開始された、全国の児童・生徒の1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。
▲ Google社認証済みの4Kチューナーレススマートテレビも販売に向けて順調に準備が進んでいる(写真左は営業部の林氏)。
販売規模を広げ、ワールドワイドな展開へ
こうして大いなる成長を遂げるイノベーターワンだが、久保島氏は今も更なる高みをめざしている。今後の展望について伺うと『国内では、2025年までにTVの販売シェアを二桁に持っていきたい。ネット量販店など様々なチャンネルで拡販していき、販売規模は今の3倍が目標』と口にした。既にMiramage Android TVとMiramage Google TVはGoogle社から認証を得ており、製品ラインアップの充実に向けた開発準備は着実に進んでいる。
さらに今回のインタビューで明らかになったのは、同氏が世界をも見据えているということだ。『来年(2024年)を準備に充てて、再来年はワールドワイドに展開したい』と意気込み、近々海外視察も予定しているという。加えて国内外へのアピールに格好の場となるのが、先般受注し準備を進めている日本最大級のxRスタジオである。ここでは最高レベルのLEDと映像処理システムを揃え、没入式のスタジオ空間を造成する。ライブ配信やCM映像制作はもちろん、シネマなどの大掛かりなものまで、幅広い活用が可能だ。久保島氏は『どうしてもハードに目が行くかもしれないが、あくまで私たちがめざすのは“トータルソリューション”。設備を存分に生かす企画設計、高精細な映像出力、シームレスな配信環境、全てを一気通貫で実現したい』と述べた。同社がこれまで取り組んできたLED関連事業に加え、今後はハイレベルな案件も受注が増えていくことだろう。
▲ イノベーターワンが受注し、現在準備を進めている日本最大級のxRスタジオ(画像はイメージ)。
“大好き”な自社製品のために勉強を続ける
さて三回に渡る取材を通して印象的だったのは、久保島氏を筆頭に、社員が自社製品に深い愛情を持っていることだ。これについては久保島氏も自ら言葉にしており、『自社の商品が大好き。大好きだからこそ、その気持ちを乗せた製品やサービスを届けられるし、受け取ったお客様からいただく高い評価がとても嬉しい』と屈託のない笑みを浮かべた。
言うなれば、スピードも質も、愛情も存分に携えて一線を走り続けている。これを実現するのは並大抵の努力ではなかろうが、社員を前に久保島氏はこの日も『勉強、勉強』と鍛錬を後押しする。そして『勉強して知識が増えれば自信がつくし、その社員を通じて当社製品に触れたお客様の感動や評価に繋がる。最終的にお客様の業務効率や日常生活の質の向上に結びつくからこそ、私たちが手を止めるわけにはいかない』と、その理由に触れた。社員はどのような未来を見据えているのだろう、とふと頭をかすめた時だった。林氏は『これまで実現してきたものも、全てが狙ってやってきたわけではなく、お客様との会話から都度ヒントを得て、トライ&エラーで築き上げてきた。ある意味“たまたま”であるからこそ、自分たちが次に何を生み出すかも想像がつかない』と話した。革新者のつくる明日は、本人たちにすら想像がつかないのだ。『とにかく明日からまた、既存の事業を伸ばしつつ、まだ見ぬ何かしらの物を生み出せるように進んでいきたい』と同氏が付け加えるように、あくまで今は“目の前のことを当たり前に”と言ったところなのだろうか。
それを聞いた久保島氏も『ナンバーワンを実現するためには、まず私がお客様以上にお客様になりきらなければ』と、初心に返った。ダイナミックなようで、その軌跡はあくまで目の前の一歩を“丁寧に”踏みしめるに過ぎないのかもしれない。
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