S&Dセレクション

〈2025.11.17〉大阪・関西万博会場内ファミリーマートで話題を集めたLEDビジョン

LED×3Dで魅せる万博ファミマ、
ゲート・ワンの仕掛ける新たな挑戦。

ファミリーマートの店舗内デジタルサイネージ「FamilyMartVision」の番組制作・配信を手がける(株)ゲート・ワンは、大阪・関西万博会場内のファミリーマートにLEDビジョンを導入。従来店舗とは異なる、万博限定のコンテンツ放映にも挑戦している。今回はメディア開発本部 ストアディベロップメント部の秋山泰明氏、エクスペリエンスプランニング本部 コンテンツ&アドマネジメント部の白幡裕彦氏、近田崇史氏の3名に、その詳細と展望を聞いた。

▲ LEDディスプレイによる「FamilyMartVision」を導入した大阪・関西万博会場内のファミリーマート。通常店舗同様のレジ上に加え、ドリンクが並ぶ冷蔵ケースの上部にも設置している。



ファミリーマート大阪・関西万博店にLEDビジョン設置

 

 そもそもファミリーマートでは、「CVS事業の基盤強化とその基盤を活用した新規ビジネス拡大」という戦略のもと、「FamilyMartVision」をはじめとする広告・メディア事業を推進。この「FamilyMartVision」の事業拡大を目的に2021年9月に設立されたゲート・ワンでは、ハードの選定やソフトの作り込みなどにおける幾多の障壁をクリアしながら、24時間365日放映されるコンテンツを制作・配信してきた。

 その中で舞い込んできたのが、大阪・関西万博会場内の店舗におけるLEDビジョンの設置だ。秋山氏は『大阪・関西万博には世界各国からの来店があり、せっかくなら新しいことに挑戦したいという狙いがあった。そこで通常のコンテンツに加えて、新しいコンテンツを放映することで、来場者の「FamilyMartVision」の認知を上げたいと考えた』と話す。

 また、これまで使用してきたLCD(液晶ディスプレイ)ではなくLEDディスプレイを選んだことも、同様に新しい挑戦である。同氏はこれについて『LCDの採用も検討したが、それよりも高画質、高輝度、優れた耐久性と長期的な運用における持続可能性のあるLEDを選定した』と語る。



新しい試みを詰め込んだ3Dコンテンツの放映

 

 実際に設置されたLEDビジョンは、大きく分けて2つ。1つは通常の店舗にも見られる「FamilyMartVision」を、幅3,600mm、高さ675mm、1.25mmピッチのLEDディスプレイで再現した。もうひとつは、ドリンクの並ぶ冷蔵ケースの上部に、高さは先と同様の675mmで、幅7,200mmのLEDディスプレイを設置。こうして複数箇所に異なるサイズのビジョンを設けるは初の試みであり、コンテンツ制作もゼロからのスタートとなった。

 プランニングとプロデュース、制作進行を担当した白幡氏は『今回は店舗自体が再生素材を利用した商品棚やレジカウンターなど、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を目指すなかで、映像制作もそれを意識したコンセプトでスタートした』と振り返る。

 具体的には、1分ほどの尺のなかに生い茂る木々や鳥といった動植物を登場させ、ファミペイ公式キャラクター「ファミッペ」も交えながらエコな生活をストーリー仕立てに表現した。この動画が3Dになっていることも特筆すべき点であり、近田氏は『映像が一番飛び出て見える瞬間を全体のどの辺りに持ってくるか。せっかくなら冒頭と終盤、それと中盤にもハイライトを持たせたいと考えて、構成を練った』と説明。その上で『とあるポイントから見ると、飛び出て見えるようなギミックを用いている。今回は高解像度のLEDを用いたことで、壁に埋め込まれたような精細な映像を再現できている。そこにギミックを加えることで、鳥やファミッペが画面の外へ飛び出すように見せることができた』と、絵作りの工夫についても話してくれた。

 これらの映像は、様々な国の人が足を運ぶことも考慮し、言葉が無くてもわかるよう工夫した。また近田氏らは現地に何度も足を運び、実際の映像の見え方、内装素材や照明器具との兼ね合いを確認しながら、色彩など細部に渡る調整を重ねたという。さらに先述の“とあるポイント”には、超指向性スピーカーもセット。『レジ上の「FamilyMartVision」にも通常店舗と同様、4つのスピーカーを設置。互いの音が干渉しないよう、超指向性スピーカーとあわせて向きを調整している』との工夫を語る。

▲ 冷蔵ケース上部のLEDビジョンでは、ファミペイ公式キャラクター「ファミッペ」も交えながらエコな生活をストーリー仕立てにした動画を放映。動画には“とあるポイント”から見ると、飛び出て見えるようなギミックが用いられている。



「FamilyMartVision」を広げる中での知見と新たな挑戦

 

 以上のようにゲート・ワンでは、大阪・関西万博店での「FamilyMartVision」設置に当たり、使用するディスプレイを液晶からLEDディスプレイに変更しただけでなく、新たなビジョンの設置、そして3Dコンテンツの制作にも取り組み、店舗空間の活用や企業メッセージの伝達方法に新たな可能性を見出した。

 今後、大阪・関西万博店で取り組んだものを通常店舗に広げていくかは未定とのことだが、こうして様々な場所・形態の店舗へビジョンを設置する取り組みは、ゲート・ワンそしてファミリーマートへ幾多の知見をもたらしている。秋山氏は『店舗の形状は一つとして同じではなく、モニターやスピーカーの配置一つとっても、毎回調整が伴う。ただ、放映内容の認知やお客様の反応は多くいただいており、広告媒体としての価値を実感している』と話す。

 コンテンツ制作を手掛ける近田氏は『「FamilyMartVision」の導入が広がるにつれ、コンテンツに対してはたくさんのお声を頂戴し、制作にあたっては様々な方の目線を持ってつくらなければならないと痛感している。今後はそうした反響を踏まえつつ、より多くの皆様に喜んでいただけるコンテンツのあり方を追究していきたい』と意気込む。

 コンテンツの方向性については白幡氏が『地域に紐づいた情報』の強化を例に挙げ、『ローカルエンゲージメントを高めうる地域ごとの情報発信について、既にエリアごとの情報の出し分けなどで試している最中。天気予報や占いなどお客様の日常生活に結びつく情報も含めて、これまで以上に買い物体験が充実するコンテンツのあり方を模索したい』と話す。

 「FamilyMartVision」の導入は約10,500店舗(2025年7月末時点)を数える。他のコンビニチェーンには無い配信メディアの更なる成長を誓って、ゲート・ワンは新たな挑戦を続けている。



【問い合わせ】
(株)ゲート・ワン
東京都港区芝浦3-1-21
E-mail:info@gate-one.co.jp
https://gate-one.co.jp

 

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