凹凸に動くLEDディスプレイ「wave」
屋内外の設置に高まる期待とその背景。
オーディオ・ビジュアルインテグレーターの(株)映像システムは、近年通常のLEDビジョンだけでなく、そのハード自体が可動する商品群の日本国内での展開を試みている。2023年からはそれに興味を持った(株)乃村工藝社とともに、空間演出における実用へ向け奔走中だ。今回の取材では、映像システムの執行役員である友末 治氏と、乃村工藝社のクリエイティブ本部 コンテンツ・インテグレーションセンター テクニカル・ディレクション部 部長である石川陽平氏に、その詳細を訊いた。
屋内外に設置可能な“動くLEDディスプレイ”
映像システムでは、5年程前から中国のLEDメーカーPJ Link社の輸入代理店を務めている。現地担当者とは定期的に情報交換を行っており、これまでもディスプレイ部が回転する大型のサイネージなどに着目、日本での拡販を模索してきた。そこに登場したのが、ユニット単位で大小様々な演出を可能とする「wave(ウェーブ)」だ。
同製品では、凹凸に動くLEDディスプレイによって、映像そのものに物理的な動きを組み合わせられる。1ユニットあたり縦3×横4のLEDパネルから成り、設置さえ許せば900ユニット以上にまで増やすことが可能だ。友末氏は『屋内用だけでなく、コーティングを施した屋外用も用意している。ピッチサイズとしても屋内用で1.9mmピッチ、屋外用で10mmピッチと、精細な表現が期待できる』と述べた。映像制作についてはAfter Effectsを用いており、プラグインを入れた状態でアプリケーション上にて動きをつけることで、「wave」での再現が可能となっている。
パッケージ化されたメリットと新規性
「wave」のようなアイキャッチ性の高い機器に期待を寄せる背景には、昨今のLED業界の目まぐるしい変化がある。友末氏は『LEDの進化は目覚ましく、高解像度・高精細化が進んでいる。今やそれだけでは注目されにくくなっているのが現状』と話し、『だからこそ「wave」のように動的な動きを加えることで、アイキャッチ性を高める。近年注目されている裸眼3D、キューブLEDといったものも、そうしたアイキャッチ性を求められてきたことの象徴に違いない。日進月歩で入れ替わり起こる業界だからこそ、私たちも高いアンテナを張りながら新しい製品を取り入れている』と述べた。
その上で「wave」をいかに世の中へ認知してもらおうか、と考えた際に相談したのが乃村工藝社である。それを受けた石川氏は次のように振り返る。
『最初にこれを見させてもらったとき、端的に“おっ”と思っただけでなく、パッケージ化されている点に注目した。当社もこれまで動きのついたLED演出を担った経験はあったが、実現のためにはLEDビジョン、メカ機構、制御機器など別々に手配をかけ、アッセンブリなどディレクションをしなければならなかった。それが既に一体となって製品化されている点、かつ新奇性が高いところにも、非常に魅力を感じた』。
そして『わかりやすく驚きが与えられる』特性を汲んだ同氏は、2023年11月に実施された「CICフォーラム」(乃村工藝社主催、コンテンツ起点での空間創造の未来を提案し最先端の空間ソリューションを紹介するフォーラムイベント)での展示を計画し始めたのだ。
空間演出における一つのソリューションへ
実は中国における「wave」の活用を見ると、現状OOHに使われることが多い。一方の映像システムには、これまでオフィス内や大学などの文教市場におけるAVシステムインテグレートを行ってきた背景がある。だからこそ日本では、この「wave」を空間演出におけるソリューションとして広めていきたいと考え、乃村工藝社の内覧会に展示を依頼したのだ。 そしてこれを受けた石川氏も『私たちの仕事は、決して“商業施設などをオープンさせたら終わり”ではない。感動が続き、継続的な集客が見込める空間づくりを求められているからこそ、演出におけるバリエーションをどれだけ増やせるか、飽きさせない工夫をいかに散りばめていくかが問われている。その点で、見せ方が無限大に考えられる「wave」には今後も期待していきたい』と歓迎した格好だ。
展示会での反響が上々だったことは言うまでもないが、それとともに友末氏が印象に残ったのは『販売する私たちの方が“こういう見せ方もあるんだ”と驚かされた』ことだと話し、今後も作り手によって可能性が広まることへ胸を膨らませた。クリエイティブの制作過程を見守った石川氏も『映像での演出に物理的な動きが加わることで、表現の仕方が無限に広がっていくのを感じた』との実感を述べ、『LED自体が性能・価格帯ともに良化していく中で、当社が受ける案件としてもLED関連は数を増している。そのなかで、より感動いただけるもの、より体験価値の高いものをと考えた時に「wave」がアイキャッチのひとつになってくれれば』と期待を込めた。
▲ 中国での「wave」採用事例。
空間演出の一部として活躍する姿を描いて
両者の話を聞いていると、「wave」が街角やイベント会場で見られる日ももうすぐそこまで来ている。今後に向けては、どのようなビジョンを描いているのだろうか。これについて、友末氏は次のようにコメントした。
『「wave」はあくまでソリューションの一つであり、空間の主たる目的に対していかに組み込んでいくかが大事。その観点でいくと、今後は「wave」単独でアピールするのではなく、空間演出の一部として役割を担わせた状態も見てみたい。もっと言えば他との連動、例えば演出照明との連携なども面白いかもしれない。そうした形で、単に目を引くということにとどまらず、空間の目的に合った使い方を模索し提案できればと考えている』。
映像システムではこうした日本国内でのアイデアについてもメーカー側にフィードバックしていると話し、『今後もインタラクティブな形でのバージョンアップを目指していきたい』と意気込んだ。『まずは「wave」を知ってもらうことが大事』と石川氏が言うように、選択肢の一つとして認知が広がれば、その分アイデアは如何様にでも生まれていくはずだ。
【問い合わせ】
(株)映像システム
東京都港区芝4-2-3 NMF芝ビル5F
Tel.03-6809-4741
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(株)乃村工藝社
東京都港区台場2-3-4
Tel.03-5962-1171(代表)
https://www.cic.nomurakougei.co.jp