8K映像のエンコードから配信、表示まで
一気通貫で構築できるシステム。
業務用液晶ディスプレイを中心としたハードの開発・製造からクラウド配信システムの構築、コンテンツの配信まで行っているBOEジャパン(株)。同社が世界最大110インチで120Hzの8K液晶ディスプレイを開発、誰もが活用できる8Kクラウド・プラットフォームになるというこの製品の詳細に迫る。
一般的な公衆インターネット回線を使って、8K映像のエンコード・伝送・クラウド・配信・表示を一気通貫で構築できるシステム「8K Viewtopia」。今回開発された8K液晶ディスプレイには、同システムが実装されている。120HzおよびHDMI2.1規格に対応しているのも特長だ。
120Hz、HDMI2.1に対応した110型8K液晶ディスプレイ
“8K”はこれまでごく僅かしか活用されておらず、ディスプレイはあってもそこに映し出す映像を受信できる環境もなく、広く普及するためのインフラは全くと言ってよいほど整備されていない状況だ。そんな中、2012年より8K開発に携わってきたBOEジャパンは、一般的な公衆インターネット回線を使って8K映像のエンコード・伝送・クラウド・配信・表示を一気通貫で構築できるシステム「8K Viewtopia」を開発したという。
そして、このシステムが実装された液晶ディスプレイは、110インチでありながら90kgと軽量仕様。120Hz、視野角178°、8Kデコーダー内蔵、HDMI2.0×4、HDMI2.1×1という業界初のスペックだ。単なるディスプレイではなく、同社がこれまで開発を続けてきた“8K”の全てのノウハウを取り入れた集大成だという。BOEジャパン代表取締役社長の久保島 力氏は以下のように語る。
『今回はシステムボードを一から開発しました。既存製品の場合、デコーダーは外付けがほとんどですが、当社の製品はこれを内蔵しています。
また、インターフェースも今現在一般的に使用されているHDMI2.0に加え、HDMI2.1も実装しています。先日発売されたソニーのPlayStation®5がようやく2.1に対応しましたが、現状、HDMI2.1で再生できる機器はほとんどありません。
HDMI2.0で8K映像を流す場合は4本のケーブルが必要ですが、2.1なら1本で流すことができます。2.0のまま、ケーブル1本で流せるようにしようと思うと、200万円以上する変換器が必要になります。
今回開発したシステムボードはプレーヤーもデコーダーも内蔵しており、インターフェースは現状のものも使えますし、今後普及していくものも使えます』。
8K映像の膨大なデータ量を使用する場合、外付けのプレーヤーだと反応が鈍かったり、映像を表示するのに時間がかかってしまう。デコーダー内蔵であれば、ここでのストレスは軽減される。スポーツ中継など素早い人の動きもクリアで滑らかに表示可能(120Hz対応)で、端子1本で8K映像を表示可能(HDMI2.1規格対応)な未来を見据えたオールインワン仕様は、他社との差別化として十分だろう。
▲ 新開発の8K液晶ディスプレイに内蔵されているシステムボード。ここにはプレーヤーとデコーダーも搭載している。
簡単に8K映像が見られなければ意味がない
BOEジャパンは、2017年に自社の8Kサーバーを立ち上げた。そこに様々な機能を追加するため、インフラを構築することにしたという。久保島氏は以下のように話す。
『8K映像の運用システムにおいては、放送なみのことをやらないとダメ。簡単に8K映像が見られるようにしないと意味がありません。また、コンテンツも簡単に制作できるようにし、コンテンツ産業の育成に繋げたいです。8Kのプラットフォームをつくれば、8K映像をつくる人が増えますし、観る人も増えます。
当社は8Kのビデオ・オン・デマンドやライブチャンネルをつくることができます。これらは当社のサーバー上で制作し、ネット経由で更新することが可能です。インターネット回線も5Gではなく、今使用している通常の回線で映像を流せるような仕組みにしています』。
8K映像を制作できる人も少なければ、2分の8K映像を制作するのに少なくとも100万円はかかるというのが現状。BOEジャパンでは8Kカメラを2台所有しており、長尺の動画以外にも、同社で撮影、制作した2分の8K動画を3万円ほどで提供する予定だという。
▲ 8K Viewtopia クラウド・プラットフォームの管理画面。このプラットフォーム上で、8K映像の制作から配信、映像購入時の決済まで行える。
インターネットに繋げば世界中どこへでも8K映像を配信、
視聴することもできる
BOEジャパンはこれまでに、展示会場で複数台の大型ディスプレイを使ってライブ中継を実施し、同時に会場以外の場所にも映像を転送するといったことを実現している。
今回の110インチ8K液晶ディスプレイも1台のカメラから複数のディスプレイ(1:N)、また、複数のカメラから複数のディスプレイ(N:N)への映像配信に対応。インターネットに繋げば、世界中どこへでも8K映像を配信できるし、視聴も可能だ。『当社は、ファッションショーやスポーツの試合などを8Kで撮って、インターネットで世界中の複数箇所へ配信するということがすぐにやれます』と久保島氏。ビデオ・オン・デマンドだけでなく、ライブ配信でも自信を示す。
同社では現在、マイクロLEDの開発にも力を入れているという。久保島氏は『マイクロLEDは画面サイズに限度がありません。映像さえ作れば、皆がびっくりするくらいの綺麗な映像を出せるので、例えばビルの壁面にマイクロLEDを設置して8Kの映像を流す。マイクロLEDなら曲面にも設置できますので、建物の形に合わせた面白い映像を作って流すことで、広告媒体としての価値も上がると思います。また、今現在、2Kや4Kで流しているデジタルサイネージを8Kに置き換えていきたいです』と今後の展望を語っている。
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