S&Dセレクション

〈2025.9.8〉インクジェット出力現場の声:(株)ベレイマージ

多様な出力ニーズに柔軟対応、
設備強化と現場力で信頼を築く。

神奈川県綾瀬市を拠点に、店舗装飾や広告グラフィックなど多様な出力ニーズに応えている(株)ベレイマージ。サイン・ディスプレイをはじめ、空間演出全般を支えるプリントワークを強みに、印刷から加工、納品までを一貫して担いながら、幅広い業種の案件に対応する。設備拡充により、新たなフェーズに進んだ同社を取材した。

▲ 2025年2月にEFI社製のRoll to Roll型UVインクジェットプリンター「VUTEk D3r」を導入。多様な出力ニーズに対応可能な体制をさらに整えた。写真の人物は代表取締役社長の町屋氏(右)と執行役員 技術開発部長の金子氏。



店舗装飾やイベント需要に対応、
カッティング及び出力機を追加導入

 

 ベレイマージでは昨今、飲食店や美容院などの店舗装飾、オフィス内のグラフィック装飾、さらにはイベント関連の案件が増加傾向にあり、印刷・加工体制の強化が急務となっていた。そんな中で導入されたのが、ミマキエンジニアリング社製のカッティングマシン「CFX」(2024年7月導入)と、EFI社製のRoll to Roll型UVインクジェットプリンター「VUTEk D3r」(2025年2月導入)である。いずれも既存設備との入れ替えではなく、業務量の拡大や精度向上のニーズに対応すべく追加導入されたもので、同社は現在、カッティングマシンを2台、大型のインクジェットプリンターもラテックス機との2台体制で運用している。



遮光ターポリンへの両面印刷や
テンションファブリックで効果発揮

 

 『CFXは、紙製の板素材を用いるディスプレイ用途専用として使用しています。既設のカッティングマシンだけでは対応しきれなくなってきたこともあり、2台を使い分けています。また、VUTEk D3rは、主に屋外広告など大型出力やテンションファブリックへの出力に活用しています』。そう語るのは、代表取締役社長の町屋 佐知子氏だ。特にVUTEk D3rの導入後は、大判グラフィックからファブリック出力まで、同機の対応領域の広さと仕上がり品質を最大限に生かしながら、業務の幅をさらに拡大している。

 とりわけVUTEk D3rが活躍しているのが、遮光ターポリンへの両面印刷や、テンションファブリックへの印刷だ。両面印刷は、フラッグなど表裏を見せたい場合に多く使われるが、素材の伸縮や印刷時のズレが製品仕上がりを大きく左右する。同社では複数メーカーのUVプリンターを比較検討した上で、最もズレの少ない機種としてVUTEk D3rを選定した。『両面印刷時のズレが5mm程度に収まる精度は大きな強みです。特に塩ビ系素材は印刷工程で伸び縮みしやすく、熱が加わるラテックスプリンターでは調整が難しい。VUTEk D3rは熱による影響も少なく、安定した出力が可能です』と執行役員 技術開発部長の金子隆昭氏は語る。


▲ 工場内の様子(写真手前は「CFX」)。



多層印刷やクリアインクを活用、
視覚表現と耐候性の可能性を拡張

 

 さらにVUTEk D3rは、複数のレイヤーを重ねて印刷する多層印刷にも対応。カラー/白/カラーの3層印刷に加え、白と黒を挟んだ5層印刷にも対応しており、表と裏で異なるグラフィックを見せたいという要望にも応えられる仕様となっている。遮光性が高く、裏写りも起きにくい。
加えて、搭載されているクリアインクの活用例も広がっている。例えば写真の一部にグロスインクを乗せることで質感を強調したり、透明フィルムにクリアマットを印刷してすりガラス調に仕上げたりと、視覚的な印象を自在にコントロールできる。

 現在同社では、屋外広告においてこのクリアマットインクを活用し、UVインクの弱点とされる耐候性の強化にも挑戦している。金子氏は『溶剤インクは素材に浸透することで比較的高い耐候性を持ちますが、UVやラテックスは素材の表面にインクが乗っている状態のため、紫外線により徐々に濃度が落ちていく。VUTEk D3rでは、4色印刷の上にクリアマットを重ねることで耐候性が上がることが実証されており、ターポリンやFFシートなどラミネートが難しい素材への対策として有効です』と話す。


ブース▲ 「モトヤコラボレーションフェア 2025 TOKYO」〔主催:(株)モトヤ〕のベレイマージのブース。同社が絶対の自信を持つ“色合わせ”の技術をアピールした。なお、写真右下のテンションファブリックは3層(カラー/白/カラー)印刷により、内部のLEDの点灯/消灯でグラフィックの花の色が変化する仕様になっている。



ファブリック印刷に手応えあり、
施工のしやすさも魅力

 

 VUTEk D3rの最大の魅力は、その出力品質の高さだ。最大印刷幅は3,500mmで、広範囲な対応が可能。インクの液滴も非常に細かく、シャープでコントラストの効いた表現が得意なため、近接で見られるようなビジュアルでも高い完成度を保てる。テンションファブリックとの相性も良く、現在はファブリック案件のすべてをVUTEk D3rで手がけているという。『以前はラテックス機で対応していたテンションファブリックも、今はVUTEk D3rです。インク割れもなく、生地の質感を生かした美しい仕上がりが可能。アパレルを中心に需要が増えており、ファブリックを印刷して店舗に送れば、店舗スタッフの手で簡単にセットできるというのも評価されています』と金子氏。
 さらにベレイマージでは、夏場に向けたイベント案件も急増しているようだ。


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▲ ベレイマージでは、製造工程で出た端材のアップサイクルにも取り組んでおり、ターポリンを使ったバッグや傘袋、ポーチなどを製作。これを地元のマルシェでも販売するなど、地域とのつながりを深めている。単なる廃材利用にとどまらず、デザイン性や実用性にもこだわったアイテムは、来場者からも好評を得ている。



色合わせの精度で信頼を獲得

 

 ベレイマージでは今年の6月末から7月頭にかけて、ターポリン大型案件を一週間で製作するなど、短期間での対応が求められる案件も多い。そうした中でも同社が特に重視しているのが、色の精度をはじめとした仕上がりの品質だ。

 これについて金子氏は『当社の強みのひとつが色合わせです。印刷会社や広告代理店からは、塗装色や指定色への厳密な対応を求められることが多く、DICやPANTONE、マーキングフィルムなど、さまざまな基準に合わせた色調補正を行っています。人物や商品写真など、色の再現性が問われる場面も多いため、先日出展した「モトヤコラボレーションフェア」(2025年7月10日・11日、秋葉原UDXにて開催された)でも、“色合わせの達人”としてその技術力をアピールしました』と語っている。

 VUTEk D3rの多層印刷機能を使った新たな提案も始まっている。ベレイマージは「モトヤコラボレーションフェア」で、点灯によってグラフィックが変化するテンションファブリックを展示。グレー調の花びらが、点灯時にカラーの花びらとして浮かび上がる演出は、多くの来場者の関心を集めた。同機は白インクの隠蔽性が高いため、裏写りしない印象的な仕上がりが実現できる。

 また、同社では製造工程で出た端材のアップサイクルにも取り組んでおり、ターポリンを使ったバッグや傘袋、ポーチなどを製作。地元のマルシェで販売することで、技術力と提案力を広く発信している。『VUTEk D3rで何ができて、どう生かせるのか。営業担当と工場が一体となって、お客様に響く提案ができるように心がけています。せっかく高額な設備を導入したからには、活用の幅を最大限に広げていきたいと考えています』と町屋氏は語る。

 確かな技術と柔軟な提案力を軸に、出力現場としての信頼を積み重ねてきたベレイマージ。VUTEk D3rをはじめとした先進設備と、社内に根づく改善意識を掛け合わせながら、これからも顧客の期待に応え続けていく。


 ベレイマージは、10月22日(水)から24日(金)に東京ビッグサイト 有明GYM-EXで開催される「サイン&ディスプレイショウ2025」(https://tokobi.or.jp/sds/)に出展予定。



【問い合わせ】
(株)ベレイマージ
神奈川県綾瀬市大上1-27-14
Tel.0467-79-7488
E-mail:info@blimg.co.jp
http://blimg.co.jp/

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