S&Dセレクション

〈2024.9.17〉インクジェット出力現場の声(ベレイマージ)

協力関係の構築で生まれる
Win-Winのビジネスモデル。

屋内外の案内サインや横断幕、大型ビルボード等の画像出力、さらにダイレクト印刷やデジタルカット加工の技術を用いた立体製作などを行う(株)ベレイマージ。ここ最近では、オフィスや店舗の装飾、イベント用のパネル製作の仕事が急増し、インクジェットプリンターやカッティングマシンが大活躍しているという。

▲ 最大出力幅3,200mmの「HP Latex 1500」。



外資系企業を中心に増える
インクジェット活用のオフィス装飾

 

 『外資系の企業を中心に、オフィス内を装飾する企業が増えています。これは社員のモチベーションの向上に繋げることが目的で、エレベーターホールなど共用スペースに加え、オフィスの扉や壁面、テーブルなどを彩ります。先日、施工させていただいた某製薬会社様では、既存の白い壁に、インクジェットプリンターでダイノックシート(3M社の粘着剤付き化粧塩ビフィルム)に出力したものを施工しました』と話すのは、ベレイマージの取締役 技術・開発部長の金子隆昭氏だ。

 金子氏が言うように、インクジェットを活用したオフィス装飾の事例は増えており、日本の大手企業などでも見られるようになった。『ガラス面には3層(カラー/ホワイト/カラー)印刷を施したコート塩ビを貼ることで、表/裏のどちらから見てもビジュアルが綺麗に見えると社員の方からも大好評』だという。

 さらに金子氏は『セミナーや発表会など、社員に向けたイベントに投資する企業も多いです。ひとつの例を出しますと、社内イベント用ステージをRe-board®(100%紙製のエコ資材)で製作し納めたのですが、その規模は200㎡を軽く超えました。オフィスの装飾同様、社員のモチベーションを上げ、社内の雰囲気の活性化を目的としたものです。このイベントは年に4回(四半期ごと)やられているようですが、Re-board®で製作したステージは保管もしやすく何度でも利用できるので、その点も喜ばれています』と話している。


実現が難しい依頼に対しても最初から断るのではなく、
どうしたら実現できるかを考える

 

 ベレイマージ代表取締役社長の町屋 佐知子氏は『最近は飲食店やサロンなど新店舗が開店することが多く、そういったお客様からの施工依頼も増えています』と語る。これらの店舗に共通するのが、マーキングフィルム(粘着剤付き塩ビフィルムシート)を使った切り文字の掲出だ。

 これについて金子氏は『多いのはガラスの内側から出力したシートを貼るというものです。ここでは、マーキングフィルムを転写させるための透明な弱粘着フィルムでリタックシートというものがあるのですが、それをマーキングフィルムに貼り付けて、スキージで擦ってその仮シートを剥がすと文字だけが残るといった感じです。目隠しシートの効果も持つフォグラス用リタックシートを使うこともあります。店舗ではベタ貼りは少なく、切り文字が圧倒的に多いですね。おそらく店内の雰囲気を見せたいというのがその理由だと思います』と説明する。

 さらに最近の傾向として『今までは出力物1点、これをお願いしますという感じが多かったのですが、例えば店舗であれば、店の内外のサインと内装、テーブルや什器などを含めた店舗全体の装飾を依頼されるお客様が増えている印象です』と町屋氏は話す。

 ベレイマージではこれまでに、某ラーメン店において、マーキングフィルムとネオン管を組み合わせた装飾を行っている。昼間はマーキングフィルムによる切り文字(同ラーメン店をイメージさせる文字)で店の訴求を行い、夜になると切り文字に沿って設置されたネオン管の光が大きな存在感を示す。昼夜で雰囲気ががらりと変わり、集客にも繋がる良い事例となっている。

 なお、この事例においてベレイマージはマーキングフィルムの施工を担当。ネオン管の施工は同社の協力企業が行っている。これについて町屋氏は以下のように語る。

 『当社にはできない依頼だとしても最初から断るのではなく、どうしたら実現できるかを考えるようにしています。自社だけでは実現できないのであれば、協力してくれる人を探せばいいんです。今回、ネオン管施工をお願いした企業は当社のお客様でもある看板屋さんです。一つ実績ができれば、それをまた違うお客様にもご提案できます。ベレイマージに頼めば、何でも実現してくれるというような安心感を持ってもらえたら嬉しいです』。

 ベレイマージではただ仕事を受けるだけでなく、同社からも発注元に仕事をお願いする、そんなWin-Winの関係を作っていくことを心がけているという。その結果として、自社の仕事の幅を大きく広げることに繋がっているのだろう。



▲ ベレイマージで現在、店舗装飾のための切り文字やカルプ文字、イベントのディスプレイパネルや展示ブース・什器などの製作で大活躍の「Kongsberg」。

▲ 2024年7月20日に新たに導入されたカッティングマシン「CFX」(ミマキエンジニアリング社製)。



増える店舗装飾・イベントの仕事に問題なく対応するため、
カッティングマシン2台体制へ

 

 ベレイマージでは既述のオフィス・店舗装飾の仕事に加え、フォトスポット製作などイベントの仕事も増えている。“推し活”ブームも追い風となり、特にアニメキャラクターの等身大パネル製作の依頼は、毎月のように入ってくるという。

 これらの製作で必要不可欠となるのがカッティングマシン。店舗の切り文字製作によりカッティングマシンの稼働率が上がったところに、さらに等身大パネル製作が加わったかたちだ。町屋氏は『ありがたいことに、店舗装飾やイベントの仕事が増えてきています。これに伴い、切り文字やカルプ文字、ディスプレイパネルや展示ブース、什器など、カッティングマシンを使うことも増えました。今後、さらに同様の仕事が増えても問題なく対応できるように、カッティングマシンをもう一台導入することにしました。これまで「Kongsberg」1台だったのをミマキさんの「CFX」を加えた2台体制でいきます』と受け入れ体制も万全だ。



7V1A8129▲ インクジェット出力(ラテックスプリンター使用)によるグラフィックを施した、テンションファブリック(W5,000mm×H1,300mm)が映えるライブハウス。グラフィック(ファブリック)の取付けは、ファブリックの周囲に付いているシリコンゴムをフレームに入れ込むだけ。交換も容易で誰でも手軽に行える。

06東芝未来科学館10周年展示照明修正▲ 東芝未来科学館のイベント装飾・施工事例。

▲ 展示会ブース製作・施工事例



他社が導入していないものを
先駆けて投入していく

 

 インクジェットプリンターの課題点について尋ねると、金子氏は『耐候性』を挙げた。一般的に看板など屋外用途の場合は、溶剤インクで耐候年数は3年だと言われており、看板製作の仕事も多いベレイマージのような企業にとっては、この短い年数が悩みの種のようだ。

 金子氏は『常設看板の場合は最低でも5年保たなければダメなんです。じゃあ、どうすればよいのかというのが我々の課題になっています。例えば、5年どうしても保たせたいという場合には、ターポリンやFFシートの物件であれば液ラミ(液体ラミネート加工)をしています。ただ、加工できる幅には限界があります。最近では出力と同時にクリアインクを吹くことで耐候年数が3年以上になるという機種も出てきているので、そういった機種の導入も検討しています』とすでに先の展開に目を向けている。“まだ他の会社が導入していないものを先駆けて投入していく”という同社の姿勢が強く感じられた。

 また、町屋氏も『大手企業には難しい、私たちにしかできないことが必ずあると思っています。これまで培ってきた技術とノウハウを使いながら、生き残りをかけてチャレンジし続けていくことがこれからの目標です。以前から空間演出ができる会社になりたいと思っていましたが、最近ではそれが順調に実現できています』と話しており、十分な手応えを感じているようだ。



【問い合わせ】
(株)ベレイマージ
神奈川県綾瀬市大上1-27-14
Tel.0467-79-7488
E-mail:info@blimg.co.jp
http://blimg.co.jp/

 

 

 

 

 

 

 

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